マンション管理費・修繕積立金を滞納すると競売に?任意売却で競売回避する方法とは
住宅ローンの支払が始まると同時に、管理費と修繕積立金の支払い義務が生じます。 ですが、なかには経済的危機に陥ってしまい、支払いがままならなくなる場合があります。
今回は、マンション管理費や修繕積立金を滞納してしまうとどのような事態に発展してしまうのか。また、滞納が続いて競売にかけられてしまったときにどのようにしたら回避できるのか、を解説していきます。
管理費と修繕積立金ってなにに使われているの?払う必要ある?
修繕積立金はマンション共用部のメンテナンスや大規模な修繕工事の費用として。 管理費は日常的なマンションの管理(共用部の清掃・ごみ処理・花壇の手入れなど)として、それぞれ徴収されます。
管理費と修繕積立金は法律上の支払い義務がある
マンションの管理費と修繕積立金を支払わなければならない根拠は、区分所有法第19条に定められている以下の条文が元となっています。
“各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。”
参照元:e-gov法令検索
条文内の「規約」とは管理規約のことを指しています。
一般的に、管理規約内に管理費と修繕積立金の費用負担を求めないケースはないため、ほとんどの場合において費用負担の義務が生じることとなります。
管理費等を滞納し続けるとどうなる?
マンション管理費と修繕積立金(以下、管理費等)を滞納し続けていると、最終的には不動産を競売にかけられてしまいます。
とはいっても一切の連絡もなく、急に競売になってしまうことはありません。
どのような流れで競売へと至ってしまうのかを解説します。
競売までの流れ
なぜ競売によって不動産を処分されてしまうのかといえば、滞納している管理費等の回収のために管理組合や管理会社(以下、管理組合等)が裁判所へ競売を申し立てるためです。
ですが、1回の滞納で申し立てをすることはありません。まずは滞納者への督促から行っていきます。
督促
管理費等の滞納が数回に渡ると、管理組合等から督促のための連絡が来るようになります。督促の方法は書面、電話、訪問とさまざまです。
滞納している事実は管理組合員の周知の事実となるため、同じマンションですれ違うたびに声をかけらえるなど精神的にも辛くなる方は多いです。
債務名義の取得
「債務名義の取得」とは、裁判所に対して債務の種類や滞納額、状況等を申告することで滞納者に対して債権があると認めることをいいます。
債務名義が取得できると、債権者として差押えや競売の申し立てができる状態になります。
債務名義の取得は水面下で行われるため、滞納者からは競売に向けた準備が進行していることは気づかれることがありません。
管理組合等から連絡が来なくなったと思ったら、注意する必要があります。
差押え
債務名義の取得後、債権者である管理組合等は不動産差押えの登記を裁判所へ申し立てます。これが受理されると不動産登記事項証明書(登記簿)に差押えの登記が記されます。
とはいえ、差押えただけでは特に事態が進行することはありません。
いつでも競売の申し立てができる状態が整っただけで、実際に申し立てるかどうかは各管理組合等の判断に任されています。
競売
督促から差押えの過程でも、滞納者が支払う様子をみせず、話し合いなどの交渉の場にも応じないなど、解決の糸口が見つからないと判断されると、競売の申し立てがされます。
競売の申し立てがされると、その後から裁判所から選任された調査官などが訪れたり、不動産会社が訪問してきたりなど、周辺環境が一変します。
詳しくはこちら「競売とは?意味やメリット・デメリットのすべてが分かる」で解説していますので、参考にご覧ください。
管理費等の消滅時効は5年
2020年の民法改正にて、管理費等の債権の位置づけが変更となりました。
しかし、ほとんどの場合において管理費等の消滅時効が5年であることに変化はありません。
消滅時効が適用されれば、5年以上前に遡って滞納していた管理費等の支払い義務は免れますが、債権者側もなにもしないで時効の成立をみているわけではありません。
時効を更新できる手段として、債務名義に取得や競売の実行、滞納者に承認させるなどがあります。
時効の更新が適用されると、その時点から再カウントとなるため、消滅時効の成立を期待して督促などの連絡を無視し続けるのは、結果として損失の拡大につながってしまいます。
滞納中でも任意売却はできる?
管理費等を滞納中でも任意売却は可能です。
管理費等の滞納による差押え前で、住宅ローンも完済していれば、任意売却ではなく一般売却で不動産を売ることができます。
ですが、管理費等の滞納に至っている多くの方は住宅ローンや消費者金融からの借入も滞納していることが珍しくありません。
この場合、たとえ管理費等の滞納による差押えがなかったとしても、所有している不動産には抵当権が設定されていることが多いため、任意売却を選択することとなります。
関連記事:任意売却とは?競売を回避できる最終手段
管理費等滞納時の任意売却の注意点
任意売却による管理費等の返済は主に2通りがあります。
ひとつは購入者が支払うケース。もうひとつは売却代金から返済されるケースです。
どのような違いがあるのかをみていきましょう。
購入者が支払うケース
競売によって不動産が売却(競落)されると、落札者は購入代金を裁判所に支払い、所有権を得ます。
裁判所は購入代金を抵当権者へ優先的に振り分けていきますが、この際、購入代金が抵当権者の債権額に満たない場合、購入代金全額がその抵当権者に配分されることになります。
つまり、競売を申し立てた管理組合等にはまったく配分されません。
ではなぜ、回収できない可能性があるにも関わらず管理組合等は競売を申し立てるのでしょうか。
それは、管理費等を滞納している債務は購入者に引き継がれるためです。
区分所有法第7条および第8条にはマンション所有者に対する債権については、特定承継人(今回でいう落札者)についても同様に効力を有する旨の記述があることが根拠となっています。
このため、管理費等を滞納している不動産を購入した買主は、法的に滞納分を弁済する義務が生じるため、管理組合等にしてみるとより返済能力の高いところから回収できる可能性が高まることになるのです。
ただし、買主が滞納者に代わって返済した管理費等は、求償債権として買主が滞納者に対し支払い請求をすることができるようになりますので、滞納者の債務が消えることにはなりません。
売却代金から返済されるケース
上記のように競売によって不動産が売却されるケースでは、管理組合等は直接的に滞納分を回収することができません。
しかし、唯一売却代金のなかから返済されるケースとして、任意売却を実施した場合があります。
任意売却は不動産の売却価格が債務を完済するに至らない場合、債権者と交渉することで不動産の売却を許可してもらい、売却後の代金を債務の返済に充てることができます。
管理組合等が競売の申立人である場合、差押えられている不動産には住宅ローンが残っていることがほとんどです。
この状況では、住宅ローンを組んだ金融機関が第一抵当権者であることが多く、競売になってしまうと上述した「購入者が支払うケース」に流れていきます。
一方、任意売却で不動産を売却する場合は債権者と交渉することが可能です。
例にあげているケースでは管理組合等と住宅ローンを組んだ金融機関が債権者に該当します。
交渉出来ること以外にも任意売却のメリットはたくさんありますので、気になる方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:任意売却のメリット10選!任意売却を選ぶべき理由がすべて分かる
任意売却の成立を目指す過程で、売買代金から差し引きたい経費を交渉することができます。このとき交渉できる項目は以下の通りです。
- 引越し費用
- 滞納している税金(がある場合)
- 滞納している管理費等(がある場合)
- その他不動産売買にかかる諸費用
など
債権者(今回では金融機関)に「滞納している管理費等」を必要経費として認めてもらえることができれば、管理費等の滞納の解消と住宅ローンの返済を大幅に進めることができます。
いずれしても、競売になってしまった場合と比較すると任意売却の方が全体的な問題解決が期待できます。
住み続けるためのリースバック
競売より優れた任意売却でも、住んでいた自宅を失ってしまう点は共通しています。
引越しによる、生活環境の変化や教育環境の変化は生活を再建するうえで大きなストレスになるでしょう。
どうにか今の家に住み続けたい。そんな想いに応えられるサービスがリースバックです。
リースバックは、売却した自宅の買主と賃貸契約を結ぶことで、自宅に住み続けることができる仕組みになっています。簡単に言うと所有者が変わるだけで、居住者が変わりません。
リースバックを希望される方へ、リースバックがどういったものなのか、メリットやデメリットはなにかなどを分かりやすくまとめましたので、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:リースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまですべてが分かる
関連記事:【完全網羅】リースバックのメリット10選を徹底解説
関連記事:リースバックはいつまで住めるの?売買・賃貸契約の流れと注意点を解説
管理費滞納による競売を未然に防ぐには
管理費等を滞納したとしても、競売を申し立てられないように行動することで自宅を守ることができます。
もちろん滞納しないことが1番ではありますが、それでも滞納してしまった場合は下記のポイントを意識して競売を防ぎましょう。
必ず連絡には応じる
督促する側である管理組合等の気持ちを考えると分かりますが、いつまでも連絡が取れない状況というのは、進展がなく問題の解決に至りません。
そのため、強制的に状況を動かすべく、法的措置である競売を申し立てるのです。
逆に言えば、連絡が取れるのであれば、まだ内々で解決する糸口があるため競売の申し立てをされることはありません。
返済意思があることを伝える
連絡を取ったうえで、滞納している管理費等を返済していく意思があることをはっきりと伝えましょう。まだ目途が立っていないとしても、返済計画を立てていくという方針だけでも伝えると良いです。
自分だけで返済計画を立てられない場合は、相談することで建設的な解決に近づけることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
マンション管理費や修繕積立金は滞納しても大きな問題にならないと考えられることが多いですが、いざ滞納が続いてしまうと競売にかけられてしまうことがお分かりいただけたと思います。
急に競売と言われると焦ってしまいますが、本記事を通して
- 競売に至るまでの流れ
- 競売だと買主が建て替えるだけで返済義務が残る
- 任意売却による競売回避の方法
- 時効成立は期待できない
など、管理費等を滞納した場合の競売について無知ではなくなりました。
万が一、自身が同じような危機的状況に遭遇したとしても、全体の流れやリスクが分かっていると対策を立てやすくもなります。
また、任意売却やリースバックなどの解決方法をご希望される場合は競売回避に詳しい不動産会社に相談することをおすすめします。
当任意売却ヘルプセンターには任意売却専門相談員に加え、弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーなどが在籍しています。
任意売却の成功からその後の生活再建までを視野に入れた、競売回避の専門集団ですので気になることや聞きたいこと、相談したいことがありましたらお気軽にご相談ください。