競売にはメリットがないって本当?デメリットと一緒に徹底比較!
住宅ローンなどの滞納をしてしまい、自ら望んで競売になる人はいません。
債務者にとっては、最悪の結果を招きやすい競売ですが、実際のところ競売になるメリットはあるのでしょうか?
今回は、当事者になってみないと気付くことのできなかった競売のメリットとデメリットを解説していきます。
また、競売の流れ、競売になったときに周囲へ与える影響、競売を回避できる方法なども紹介します。
競売とは
競売とは、債務者からの返済が滞り債権の回収が期待できなくなったときに、債権者が裁判所に申し立て、不動産を差押え、換価(債権回収のため金銭に変える手続きのこと)し、債権の回収を行うことです。
競売は対象となる不動産に抵当権が設定されているかどうかで2種類に分かれます。詳しくみていきましょう。
担保不動産競売
住宅ローンなど多額のローンを組むときやお金を借りるときには、万が一返済ができなくなった場合の担保として、不動産に抵当権を設定します。
債権者がこの抵当権を実行することによって申し立てる競売を担保不動産競売と呼びます。
強制競売
一方、強制競売は抵当権の設定がない不動産を強制的に競売にかけることをいいます。
たとえば、個人間の金銭の貸し借りでは抵当権を設定していないケースが多く、返済が滞納されてしまった場合の回収手段がありません。
そこで、債権者が裁判所に対して金銭貸し借りの事実および債務不履行の事実を申し立てます。確定判決(債権回収できる権利が確定すること)が下りると、強制競売の申し立てが可能になり、不動産を競売で換価し債権回収ができるようになります。
競売と公売の違い
よく競売と混同されるもので公売があります。
競売と公売の違いは明確で、競売申立人が民間(個人・法人)であるか、国や地方自治体、他公的機関であるかによります。
- 金銭の貸し借り等を理由とした債権回収で民間が申し立てるのが競売。
- 税金の滞納等を理由とした税金回収で国や地方自治体、他公的機関が申し立てるのが公売。
公売は裁判所などの許可を得ずに、不動産や動産などの差押えが認められています。
法律上、督促状を発した日から10日以内に税金が納付されないと差し押さえてよいことになっているため、競売よりも進行速度が早い点に注意が必要です。
税金滞納時の対処法や公売を回避する方法については、以下の記事で解説しています。
関連記事:税金滞納は危険!大切な財産や住宅を差し押さえから守る方法を紹介
関連記事:固定資産税滞納中でも任意売却できる?他3つの対処方法を紹介!
競売のメリット
競売にメリットがあるかどうかは、住宅ローンを滞納している方や競売を申し立てられている方からすると非常に気になるポイントです。
メリットが多ければ競売をあえて回避する必要もなさそうですが、本当のところはどうなのでしょうか。
競売のメリットをみていきましょう。
不動産の売却が自動的に進行する
競売は債権者が裁判所に申し立てることで始まり、その後は裁判所の主導の下、価格査定や売却期間、落札者の決定と売買代金の債権者に対する分配までが自動的に進行します。
債務者の視点からすると、不動産の売却と債権者への弁済が何もせずに実施されるため手間がかからず、楽をすることができます。
しかし、競売そのもののデメリットとして、市場価格より安い価格で売却されてしまいますので、メリットとデメリットの釣り合いが取れません。
最大限自宅に住み続けられる
住宅ローンを滞納し始めた月から競売による落札までは約9~12カ月ほどがかかります。その間は自宅に住み続けることが可能です。
任意売却の場合は、競売で落札される前に不動産の売却を完了させなければなりません。
そのため、競売と比較すると自宅に住み続けられる期間はどうしても短くなってしまいます。
ですが、任意売却を行ったあとにリースバックをすることで、不動産の売却後も自宅に住み続けることが可能です。
自宅に住み続けたい方は、任意売却を依頼する際にリースバックも希望していることを担当の相談員にお伝えください。
関連記事:不動産競売の流れと恐ろしいデメリットとは?
関連記事:リースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまですべてが分かる
仲介手数料がかからない
競売は債務者の意思と関係なく不動産が売却されるため、売主という考え方が存在しません。
また売却にあたって、宅建免許を持つ不動産会社も不要であることからも、仲介手数料が発生しません。
宅建業法では不動産売買における仲介手数料は売買価格の6%までと上限が決まっています。
※実際は売買金額の多少によって細則があります
たとえば、売買価格2,500万円の不動産を売買する際には150万円の仲介手数料がかかります。
仲介手数料がかからない点は大きなメリットだと言えそうですが、次章で紹介する「競売のデメリット」でこれもまた打ち消されてしまいます。
早速みていきましょう。
競売のデメリット
ここまでに紹介してきました競売のメリットは、これから紹介する競売のデメリットと比較すると、どれも打ち消されてしまうものばかりです。
それほどに競売のデメリットは多く、影響も大きいということが分かると思います。。
具体的にはどのようなデメリットがあるのか、ひとつずつ解説していきます。
売却価格が低い
競売を象徴するデメリットに「売却価格の低さ」があります。
競売による売却価格の相場は市場価格の50%~70%程度と言われており、その理由は以下に代表されます。
- 内覧ができず物件状況を詳細に確認できないため、購入リスクが高い
- 公告される範囲が狭く、入札競争が一般市場に比べて起こりにくい
- 契約不適合責任が適用されないため、購入リスクが高い
- 法律面など、競売の知識がないとトラブルに発展する可能性が高い
- 競売へ入札する購入希望者が少ない
- 入札に参加するために保証金として売却基準価格の20%を先に預けなければならない
など、他にもありますがいずれもリスクの高さや購入の難易度が高いことが理由となっています。
競売申立費用が加算される
債権者が裁判所に競売を申し立てる際には、競売申立費用がかかります。
申し立てるのは債権者ですので当然債権者が支払うのですが、実は競売申立費用は最終的に債務者に請求されます。
債権者は一旦立て替えているだけに過ぎず、気づかない間に債務者の負債が増えていることになるのです。
競売申立費用は予納金、申立手数料、差押登記の登録免許税、郵送切手代で構成されています。
たとえば、住宅ローンの残債が2,500万円ありこの回収のために債権者が競売を申し立てると、競売申立費用は約110万円がかかります。
110万円が債務に加算されると、債務を完済するためには2,610万円以上で不動産が売却できなければいけません。
もし完済できない場合は、競売後に一括返済する義務が残ります。
関連記事:え、競売の費用は債務者が負担?実際にかかる競売費用を紹介
遅延損害金が加算される
競売申立費用よりも深刻な影響を与えるのが、遅延損害金です。
遅延損害金は一般的に年利14.6~20%で設定され、滞納開始直後から加算されていきます。
住宅ローン滞納による競売を例に説明すると、競売で不動産が売却されるのが約1年後であるため、2,500万円の残債がある場合は約365~500万円の遅延損害金が発生しています。
先の競売申立費用と合わせると、約3,000万円前後の債務へと膨れ上がってしまうのです。
2,500万円(残債)+110万円(競売申立費用)+365~500万円(遅延損害金)=2,975~3,110万円
完済できず残った債務は一括返済
消費者金融から借りている数百万円の滞納を理由に競売を申し立てられた場合は、不動産売却代金でまだ完済できる余地がありそうですが、住宅ローン滞納などを理由とする場合は、完済できるケースはほとんどありません。
不動産売却後も残ってしまった残債は、引き続き一括返済を要求されます。
一括返済ができないときは、任意整理や自己破産を本格的に検討する必要があるでしょう。
競売になったときと同様に連絡を無視したり、対応を放置したりすると、預金口座の差押えや給与の差押えをされる可能性が高くなります。
引越費用がかかる
ここまでに説明してきた、競売申立費用と遅延損害金は債務に加算されるものの、今すぐ手元からなくなることはありません。
しかし、競売で不動産を失うということは住居がなくなるということですので、新たな住居へと引越しをする必要があります。この引越し費用は手元から捻出しなければなりません。
引越し費用は、家族構成や引越し先、荷物の量によって大きく変動しますが、最低でも約70万円を用意しておく必要があります。
―――東京郊外4人家族の例―――
・敷金…130,000円
・礼金…130,000円
・前家賃…130,000円
・仲介手数料…130,000円
・鍵交換費用…15,000円
・ルームクリーニング代…50,000円
・保証料…なし
・引っ越し代金…100,000円
=合計:685,000円
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競売情報が公告され周囲に知れ渡る
金銭的なこと以外のデメリットとして、競売にかかっている事実が公開されることがあります。
競売になると、入札額を判断するための情報として3点セット(現況調査報告書、評価書、物件明細書)が裁判所内および不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)にて公開され、誰でも閲覧可能な状態になります。
その他にも、競売にかかった不動産には入札を検討している不動産会社や個人が現地に訪れることもあります。
近隣住民や周辺の人から見ると、普段とは違う人の出入りが激しくなるため、何かあったのだと気付く人も出てくるでしょう。
退去に応じないと強制退去させられる
競売で不動産が落札されると、新たな所有者である落札者から退去通知が届きます。
通知書に記載されている退去日までに退去しない場合は、強制執行により退去させられます。
強制執行による退去は色々な方法があり、居住者が不在の際に鍵を変えたり、揉めてしまうような場合は警察官立ち合いの下、退去するなどといったケースがあります。
競売による不動産売却では引越しなどが計画的にできない点も同様にデメリットとなるでしょう。
競売による周囲への影響
競売にかかることで自身や周囲にはどのような影響が生じるでしょうか。
実際に競売にかかってしまった方の話を基に影響の内容や度合いを解説していきたいと思います。
自身への影響
自宅を失ってしまうと目に見える形で幸せがなくなったことを実感します。
また住居も変わるため、通勤が不便になったり、仕事そのものが変わるかもしれません。
新しい生活はマイナスからのスタートとなるため、精神的なストレスも大きくなります。
家族への影響
配偶者がパートやアルバイトなどをしている場合、引越し先によっては辞めることを検討しなければなりません。
また子供がいる場合は通学学区の変更による転校の必要がでてくる場合もあります。
特に思春期の子供が大人の都合で転校することは、人格形成のうえでも大きな影響を与えることになるでしょう。
連帯保証人への影響
家族以外にもっとも直接的な影響を受けるのが連帯保証人です。
連帯保証人は債務者の債務履行を保証しているため、競売後に残った債務に対しても支払い責任を負います。
競売は債務者の自己破産率も高く債務額も増えてしまいますから、連帯保証人にとっても良いことがありません。
関連記事:住宅ローン滞納による連帯保証人への影響は?任意売却で最小限にする方法を解説
競売の流れ
競売のメリットのひとつとして不動産の売却が自動的に進みますが、その進行もいくつかのステップに分かれます。
住宅ローンの滞納による担保不動産競売を例に流れをみていきましょう。
- 一括弁済要求が通知される
住宅ローンの滞納が6カ月ほど続くと、金融機関から期限の利益喪失および一括弁済要求が通知されます。
- 保証会社が代位弁済を行う
金融機関からの一括弁済要求に応じないと、保証会社が債務者に代わり代位弁済を行います。
代位弁済後は抵当権も保証会社に移転するため、金融機関からの督促が止まり、今度は保証会社から一括弁済要求が届くようになります。
- 競売開始決定通知書が届く
保証会社からの一括弁済要求にも応じないと、抵当権を実行し競売が申し立てられます。
裁判所が申し立てを受理すると、債務者の下へ競売開始決定通知書が届きます。
- 現況調査が行われる
競売開始決定がされると、対象となる不動産の状況や価格基準を決めるため現況調査が行われます。
現況調査には裁判所から調査官と不動産鑑定士が派遣され、外観撮影や室内の撮影、居住者への質問などが行われます。
- 物件情報が公告される
現況調査の調査内容を基にまとめた3点セット(現況調査報告書、評価書、物件明細書)が公告されます。
公告は裁判所内と不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)で誰でも閲覧することが可能です。
- 期間入札の開始
約1週間の入札期間で購入希望者からの入札を受け付けます。
- 開札
入札期間終了後、すべての入札を確認し最高額の入札者を落札者とします。
- 売却許可決定
裁判所による落札者の審査後、正式に購入者が決定します。購入者が落札価格の代金を裁判所へ納付すれば購入完了です。
- 退去
正式に不動産が購入者のものになると、現居住者へ退去通知が届きます。
指定期日までに退去しない場合は、強制執行により退去させられることになります。
任意売却で競売を回避しよう
任意売却を行うと競売を回避することができます。
競売を回避できるということは競売のデメリットも競売によって生じる影響も防ぐことができるということです。
任意売却とは一体何なのでしょうか? ここからは任意売却について具体的に解説します。
任意売却とは
任意売却とは、抵当権の設定がされている不動産を債権者と交渉することで、抵当権を外していただき、売却可能な状態とすることで、一般市場で売却することを指します。
通常、抵当権が設定されたままの不動産はほとんど購入されることがありません。
なぜなら、抵当権を実行されると強制的に不動産を売られてしまうからです。
せっかく購入した不動産が自身とは関係のない理由で売られてしまうリスクは誰も許容しないでしょう。
このため、任意売却は競売を避ける手段としてよく利用されます。
住宅ローンが残っているため、抵当権が設定されているものの、競売で売却されてはデメリットや影響が大きいので任意売却で不動産を売却する。という使われ方です。
任意売却のメリット
任意売却は競売を回避することができます。そのため競売によるデメリットや影響も回避することができますが、それ以外にも任意売却によるメリットが存在します。
競売より高く売却できる
任意売却の販売方法は、通常の不動産売買と変わりがありません。
市場価格と同じ水準で売買活動が行われますから、競売による売買価格と比較すると最終的に競売より高く売却できます。
残債の返済方法が交渉できる
任意売却の最大の特徴として「債権者と交渉できる」があります。
この交渉は任意売却の価格を決めるうえでも重要ですが、任意売却完了後もまだ債務が残ってしまい、その債務の返済方法、頻度、金額についても交渉できることが最重要ポイントです。
交渉次第ではありますが、月々の返済額を5,000~30,000円までの間で考慮いただけることが多いです。
遅延損害金も交渉できる
競売のデメリットで紹介した遅延損害金ですが、任意売却ではこの遅延損害金の支払いについても交渉することが可能です。
債権者によってどこまで譲歩いただけるかは大きく異なりますが、全額免除、一部免除、減額などの対応が期待できます。
競売と比較すると数百万円以上も加算されるはずの債務をなくすことが可能です。
このほかにも多くのメリットが任意売却にはあります。
任意売却のメリットについてはこちらの記事でも解説していますので、ご覧ください。
関連記事:任意売却のメリット10選!任意売却を選ぶべき理由がすべて分かる
まとめ
競売のメリットとデメリットを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
競売にもメリットはありましたが、そのどれもが別のデメリットを生み出してしまっているか、任意売却のメリットに劣ってしまっていました。
また競売によって生じる周囲への影響は大きく、これらは競売経験者の声を基に表面化してきたもので、あらかじめ知ることはなかなかできません。
デメリットや周囲への影響、回避する手段が明確になった今、競売を回避するための任意売却を検討することをおすすめします。
任意売却ヘルプセンターには、任意売却経験の豊富な専門相談員が在籍しており、ご相談者さまのご要望に合わせて、最良の形で競売を回避します。
弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーの提携先とタッグを組み、任意売却後の生活再建もサポートしておりますので、安心してご相談いただけます。
現状について相談したい方、競売を回避したい方、任意売却を検討したい方、構えることなくお気軽にご相談ください。