配偶者である旦那や妻が自己破産をするとどんな影響が?住宅ローンはどうなる?

自身が自己破産をするとき、配偶者や家族、周囲にどのような影響がおよんでしまうのかは気になるものです。
その一方で、自身ではなく配偶者が自己破産をしてしまった場合、自身にどのような影響が生じるのかも知っておく必要があります。

そこで今回は配偶者が自己破産をしてしまったとき、自身や家族、住んでいる家はどうなってしまうのかという点について解説していきたいと思います。

配偶者が自己破産をしたときの影響

配偶者が自己破産をしたときの影響は、自身と配偶者がそれぞれどのような役割を担っているかによって大きく異なります。

役割別にいくつかのケースを想定してみましたので、ひとつずつみていきましょう。

配偶者が住宅ローンの連帯保証人になっているケース

このケースでは住宅ローンの主債務者が旦那、連帯保証人が妻である場合を想定し解説します。

配偶者である妻が個人的な借金などの理由で自己破産をすると、自己破産をしたことによって、連帯保証人であるための条件を満たすことができなくなります。

連帯保証人であるための条件は民法第450条1項に定められており「弁済をする資力を有すること」がそのうちの1つです。
自己破産をするとこの条件を満たすことができなくなり、連帯保証人を続けることができなくなります。

また、一般的に住宅ローンの契約には連帯保証人に関する条項が定められています。
そのため債権者は債務者である旦那に対して「新たに連帯保証人を立ててください」と要求することができます。
この要求に応じられない場合は、期限の利益を喪失することとなり、住宅ローンの残額を一括で返済するよう求められる場合があります。
さらに一括返済に応じられない場合は、債権者が抵当権を行使し、自宅が競売にかけられ失ってしまうことになります。

このように、配偶者が住宅ローンの連帯保証人になっているケースで自己破産をすると、結果として自宅を失ってしまう可能性があります。

自宅を配偶者と共同で所有しているケース

このケースでは住宅ローンの主債務者が旦那、連帯保証人はなしで、自宅の所有権(共有持分)を配偶者と各2分の1ずつ所有している場合を想定し解説します。

先ほどと同様に、配偶者である妻が個人的な借金などの理由から自己破産に至ったとします。
自己破産をすると不動産や20万円以上の価値になる財産はすべて換価の対象となります。 つまり、妻の名義となっている自宅の2分の1も換価の対象となります。

この場合取れる選択肢は3つあり、それぞれに特徴があります。

  1. 旦那が妻の持分を購入し、全所有権を旦那のものとする。
    市場価格に照らし合わせて査定した金額で、妻の持分を購入します。
    ただし、この購入においては住宅ローンを使用することはできません。
    そのため、現金で一括購入する必要がありますから、一番理想的ですがもっとも難しい解決方法です。
  2. 妻の持分を購入した第三者と共同で所有する。
    妻の持分を第三者が購入すると、自宅の所有権の2分の1は他人のものとなります。
    この場合想定されるのが、家賃の支払い請求や持分の買取依頼、買取りができない場合は売却依頼が行われることです。
    どのような形にしても揉めごとになる場合が多く、家賃の支払いや買取りが難しい場合は、旦那の持分を売却し自宅から引っ越すことになるでしょう。
  3. 旦那の持分も合わせて、全所有権を売却する。
    不動産を1つの資産として売却する場合と、分割された状態である共有持分のみで売却する場合とでは、買い手の付きやすさから後者は売却価格が低くなる傾向にあります。
    そこで、上記で解説した選択肢の1と2が難しい場合は、最初から妻の持分と旦那の持分を合わせて売却することで、市場価格での売却を実現させます。
    そして得られた売却代金の半分を破産管財人へ、もう半分を旦那の売却益とし、これを元手に新たな住居への引越しを行うとよいでしょう。

配偶者が住宅ローンに関与していないケース

このケースでは住宅ローンの主債務者が旦那、連帯保証人はなしで、自宅の所有権も旦那のみである場合を想定し解説します。

妻が住宅ローンも自宅の所有についても関係していない場合、自己破産による自宅への影響はありません。

配偶者の債務の連帯保証人になっているケース

このケースでは住宅ローンの主債務者が旦那、連帯保証人はなしで、自宅の所有権も旦那のみですが、妻の借金の連帯保証人である場合を想定し解説します。

配偶者である妻が自己破産をする理由となった複数の消費者金融からの借入について、旦那がその一部の連帯保証人になっている場合は、自己破産をした妻の代わりに債務を履行する必要がでてきます。

債務額によっては借金を完済することができるかもしれませんが、金額が大きく返しきれない場合は旦那自身も自己破産を検討する必要がでてきます。

仮に旦那も自己破産を選択する場合は、旦那名義である自宅が換価の対象に含まれることとなるため、結果として自宅を失ってしまうことになる可能性があります。

配偶者が自己破産したあとに住宅ローンを組めるの?

自己破産をした配偶者自身は信用情報機関から事故情報が消えるまでの5~10年の間はクレジットカードを作成したり、各種ローンを組んだりなどの信用取引は行えなくなります。

ですが、主となる債務者の信用情報に問題がなければローンを組むことは可能です。 たとえば、妻が自己破産をしている状態で旦那が主債務者となり住宅ローンを組むことが可能です。

この場合で注意しなければならないのは、自己破産をした妻が連帯保証人になることはできないため、別の方に連帯保証人をお願いするか、連帯保証人が求められないフラット35を利用する必要があります。

離婚後に元配偶者が自己破産をしたときの影響

ここまでは夫婦が婚姻関係にある状態のケースについてお伝えしてきました。
次に夫婦が離婚をしてしまい、別居しているなかで元配偶者が自己破産をしてしまったケースをご紹介します。

主債務者の元旦那が自己破産をしたケース

このケースでは住宅ローンの主債務者が元旦那、連帯保証人が元妻で、自宅の所有権は元旦那のみである場合を想定し解説します。
なお、自宅には元妻と子供だけが居住しており、元旦那は別の賃貸住宅に居住しているとします。

上記のケースは、離婚した夫婦のなかでもっとも多く起こり得る住宅ローントラブルのひとつです。

住宅ローン契約においては夫婦が離婚したからといって、連帯保証人であるための条件を喪失したり、やめたりすることはできません。
そのため、離婚後に元旦那がなんらかの理由により自己破産をしてしまった場合でも、連帯保証人である元妻が代わりに債務履行の義務を負うこととなります。

このとき一番影響を受けるのが元妻と子供です。
元旦那の代わりに債務の一括返済を債権者から求められた元妻は、この要求に応じられない場合、住んでいる自宅を競売にかけられ失ってしまうことに繋がります。

ですが、連帯保証人になっている債務が住宅ローンのみである場合は、任意売却やリースバックを使用することで競売を回避できる可能性があります。

もし他の債務の連帯保証人にもなっている場合、債務の総額によっては元妻も自己破産を検討する必要がでてきます。

連帯保証人の元妻が自己破産をしたケース

このケースは先の「配偶者が住宅ローンの連帯保証人になっているケース」で説明した内容と同じになります。
主債務者である元旦那が新たに連帯保証人を立てられない場合、期限の利益を喪失し一括返済を要求され、これに応じられないと自宅を競売にかけられ失うことになります。

自己破産以外の解決方法

自己破産には、支払い切れない債務が免責されるという大きなメリットがあるものの、自身の状況によっては配偶者や家族にまで大きな影響が出てしまうことが分かりました。
では支払い切れないほどの債務があるとき、連帯保証人に迷惑をかけない自己破産以外の選択肢はないのでしょうか。

ここからは自己破産以外の債務整理である任意整理と個人再生、そして自宅の高値売却ができる任意売却について解説していきます。

任意整理は連帯保証人がいない債務だけ交渉できる

任意整理は、裁判所を介さずに債権者と交渉を行うことのできる債務整理のひとつです。
弁護士を通じて債権者との取引条件や返済計画を話し合い、将来に生じるであろう利息をカットすることを目指します。

また「任意」とあるように交渉する債権者を任意で決めることができます。
たとえば、連帯保証人がついている債務に関しては交渉の対象から外し、ついていない債務のみ債権者と交渉することで、連帯保証人へ影響がでることを防ぐことができます。

ただし、任意整理には注意点もあります。
利息をカットした後は通常3〜5年程度で債務(元金)を完済する必要があるため、月々の返済額が現状よりも増加する場合があります。

任意整理をしたとしても返済が楽にならない場合は次の個人再生を検討してみましょう。

個人再生は借金が5分の1以下になる

個人再生とは、裁判所からの認可を受けることで全債権者に対して大幅に債務の減額を図ることのできる債務整理のことです。

減額幅は5分の1~10分の1と大きく、原則3年で返済することが求められます。
また交渉の対象は自動的に全債権者となるため、任意整理のように対象を任意に選択することができません。
すると、連帯保証人のついている債務も対象に含まれることとなりますから、連帯保証人への影響が生じてしまいます。

ですが、連帯保証人のついている債務が住宅ローンのみである場合は活用の余地があります。
個人再生には住宅ローン特則というものがあり、この特則を使用することで住宅ローンに関しては個人再生の対象外とすることができます。
住宅ローンだけはこれまで通り払い続けることで、連帯保証人への影響もなく、自宅に住んでいる場合は出ていく必要もなくなります。

住宅ローンが残っていても売却できる任意売却

任意売却とは、自宅に抵当権が設定されている状態でも売却することができる方法のことです。
任意売却の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

関連記事:任意売却とは?競売を回避できる最終手段
関連記事:任意売却のメリット10選!任意売却を選ぶべき理由がすべて分かる
関連記事:任意売却の流れと実施できる期間を解説!成功のためのポイントも紹介

任意売却の特徴は債権者と交渉できる点にあります。
任意売却で不動産を売却できたとしても、売却金額が住宅ローンの返済金額に届かない場合、残りの債務とその返済方法、期間についても交渉することができます。
このため、債権者次第とはなりますが、可能な限り連帯保証人に迷惑をかけることなく不動産の売却ができるのが任意売却なのです。

よくある質問

親が自己破産をした場合の子供への影響は?

親の自己破産が子供に直接影響を与えることはありません。
自己破産は個人に対して行われるため、子供であろうとなかろうと、他人へ直接的に影響が生じることほとんどありません。
ですが、子供でも親の連帯保証人に入っている債務がある場合は、自己破産をした親の代わりに返済義務が生じますので注意が必要です。

連帯保証人が自己破産したことを債権者に報告する必要があるか?

本記事で解説したように、連帯保証人が自己破産をすると連帯保証人であるための条件を満たせなくなることから、実質的に連帯保証人ではなくなっています。
しかし金融機関側では債務者または連帯保証人からの申告がない限り、すぐに連帯保証人の自己破産を把握することはできません。

また契約内容にもよりますが報告義務が必ずしもない場合は、代わりになれる連帯保証人を見つけてきたうえで金融機関側に報告するのもよいかもしれません。

まとめ

今回は、配偶者が自己破産をしてしまったときの債務者への影響について解説しました。
影響の度合いは債務者と配偶者の関係性によって大きく異なることが分かったことと思います。

とくに配偶者が連帯保証人でもあり、自己破産をされることで受けるもっとも大きな影響は、代わりの連帯保証人を見つけられない場合に期限の利益を喪失し一括弁済を求められることです。

任意売却ヘルプセンターでは不動産の売買に強い弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーと提携をしています。
不動産を所有している状態での自己破産や債務整理には考慮すべき事項が数多くありますので、お気軽にご相談ください。

記事の執筆者

長井一記
長井一記 / 任意売却ヘルプセンター センター長

少年期に経験した競売と、不動産業界にて数多くの不動産売買に従事した経験から、少しでも多くの方を競売から救うことのできる「任意売却ヘルプセンター」を設立。
ご相談者さまに寄り添い、任意売却・リースバック・その他の解決手段で競売回避を実現します。

趣味:登山/ジム/地域ボランティア

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