リースバックの家賃が払えない?滞納時の流れと滞納しないための対策方法を

リースバックで売却した住宅に住み続けるためには家賃を支払う必要がありますが、途中で家賃が払えなくなるという事態に直面することがあるかもしれません。

リースバックの家賃滞納に陥る理由はさまざまであり、誰にでも予期せず起こり得ることです。そこで本記事では、リースバックの家賃を滞納した場合の流れ、滞納の理由やきっかけ、家賃滞納を回避する方法などについて解説します。

リースバックの活用にあたり万が一の場合に備えたい方や、すでに滞納してしまっている方は、ぜひ参考にしてください。

参照元:国土交通省 住宅のリースバックに関するガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について

リースバックの家賃が払えず滞納するとどうなるの?

リースバックの家賃を滞納しても、すぐに退去を求められるわけではありません。家賃滞納の事実を管理会社等が把握すると、まず支払の督促が行われます。

次に家賃を立て替えた保証会社からの督促が行き、これにも応じない場合には内容証明郵便が届きます。さらに滞納が続くと、契約解除の通知が行われ明け渡しの訴訟にまで発展するというのが主な流れです。

家賃が払えないことで、家庭不和や離婚に発展することも考えられます。家賃滞納によって起こる事態と、その流れについてさらに詳しくみていきましょう。

リースバックの家賃が支払えなくなった後の流れ

ここでは、家賃を払えなくなった後の流れについて、詳しくみていきます。
特にリースバックの家賃を滞納してしまっている方は、現在の状況と照らし合わせて、どの段階まで進んでいるかを確認してみてください。

貸主から家賃支払いの督促がくる

まず、家賃を滞納した1ヶ月目は貸主から家賃支払いの督促がきます。リースバックをしている際は貸主が会社であることが多く、支払い予定日に家賃の支払いが確認できない場合には、電話で督促が来ることが多いです。

1ヶ月目の家賃滞納は、残金不足など故意によらないこともあるため、督促に対して迅速な対応をすれば大きな問題には発展しません。しかし、督促を無視すると次のステップに移行します。いかなる理由で滞納していようとも、貸主と連絡をとり状況を説明する姿勢が大切です。

保証人(保証会社)に督促がくる

貸主からの家賃支払いの督促に応じない場合は、保証人(保証会社)に督促がいきます。リースバック会社を通じてリースバック契約を行う場合には、保証会社の利用を求められることが多いため保証会社に督促がいきます。

保証会社とは、利用者から保証料を受け取る代わりに、ローンや家賃の支払いが滞った際に立て替えて支払いをしてくれる会社のことです。

保証会社が家賃の立て替えをすると、今度は保証会社の方から借主に対して督促を行うことになります。借主が保証会社からの督促にも応じない場合には、さらに次の段階へ移行します。

内容証明郵便による通知

リースバックの家賃を滞納してから2ヶ月ほどが経つと、内容証明郵便が送られてきます。内容証明郵便とは、以下のような内容を郵便局が証明してくれる特別な郵便のことです。

  • 誰が誰に送ったのか
  • いつ送ったのか
  • どのような内容か

貸主や保証会社から内容証明郵便が届くということは、裁判の準備を進めている段階にきているとの見方ができます。弁護士に依頼をしている場合には、弁護士の名前で届きますが、法律の専門家の名前で内容証明郵便を送ることで、借主に対してプレッシャーを与えるという狙いもあるのです。

貸主との賃貸契約によっては、この段階で家賃を支払うことでまだ住み続けられる場合があります。しかし、リースバックの買戻しを予定していた場合には、家賃を滞納したことによって買戻特約や再売買の予約が解消されることがあります。

そのため、リースバックした不動産の買戻しをしたいと考えている方は、家賃を滞納することのないように注意しましょう。

契約解除通知

家賃の未払いが3ヶ月程度になると、契約解除通知が届きます。

貸主側から賃貸契約を解除できる事由については借地借家法で定められており、家賃の滞納は正当な事由のひとつとされています。何ヶ月滞納すると解除事由となるかは明確に定められていませんが、一般的な目安は3ヶ月程度です。

契約解除通知が届く段階までくると、退去せざるを得なくなります。

退去

契約解除通知が届くと即時退去する必要がありますが、それでも退去しない場合には明け渡し訴訟が起こされ、強制退去となる可能性があります。

明け渡し訴訟にかかった費用は借主側が負担するよう求められるため、契約解除通知が届いた場合には、長く居座らずにすみやかに退去するようにしましょう。

また、自主的に退去した場合であろうと強制的に退去させられた場合であろうと、借主には家賃の未払い分を精算する義務が残ります。

リースバックの家賃を滞納してしまう理由ときっかけ

リースバックの家賃滞納に陥るにはさまざまな理由がありますが、主に収入の減少と支出の増加に大別されます。

収入が減少する要因には、事故や病気で働けなくなるほか、業績悪化やリストラなどがあります。一方、支出が増加する要因は家賃の値上げなどです。

本人にはどうしようもない予期せぬ出来事もあるため、誰にでも起こり得ることだといえるでしょう。それぞれの理由やきっかけについて詳しく解説します。

事故や病気で働けなくなる

事故や病気によって働けなくなり、収入が減少してしまうことはリースバックの家賃を滞納してしまう大きな理由のひとつです。治療費や入院費が必要になるため、収入が減ると同時に支出が増えてしまいます。

治療や入院が長期化した場合には、さらに支出が増大するため、貯蓄が十分でないと家賃を支払う余裕がなくなってしまうのです。不慮の事故などは誰にでも起こり得るので、万が一の際の備えが大切です。

会社の業績が悪化する

会社の業績悪化が家賃の滞納につながることもあります。経営状況が厳しくなるとボーナスが減額または不支給になることもあるでしょう。また、残業時間が減少すると月々の手取り収入も減ってしまいます。

業績悪化の場合、給料が突然ゼロになるわけではありませんが、収入が大きく減ると家計が逼迫(ひっぱく)し、家賃代を払えない状況に陥ってしまいます。

また、会社が倒産してしまった場合には収入がなくなるため、貯蓄を蓄えていなければ生活はおろか家賃を支払うこともできなくなるでしょう。

リストラされる

家賃を滞納してしまう原因として、会社からリストラ(解雇)されることも考えられます。リストラは予期せず突然行われることが多いです。

通常は解雇する30日前の予告が必要であると労働基準法で定められているため、すぐに職を失うわけではありませんが、退職日までに次の就職先を見つける必要があります。

転職ができない場合、失業状態となり雇用保険から失業手当を受け取れますが、給付は離職日から最大で1年間のみです。在職年数によっては、さらに受け取れる期間が短くなるため、リストラされて数ヶ月後には家賃を滞納してしまう可能性があります。

事業に失敗する

会社の経営者や個人事業主であれば、事業に失敗することが家賃滞納につながる恐れがあります。また事業資金の借り入れのために、個人資産である不動産などに抵当権を設定することがありますが、事業に失敗し返済が滞ると競売にかけられて資産を失うことになりかねません。

また、倒産すると収入自体がなくなります。貯蓄が少なく、事業の失敗によって多額の借金を抱えてしまった場合には、生活が成り立たなくなり、家賃の支払いが困難になることもあるでしょう。

リースバックで得た売却代金が底をつく

リースバックをすることで、場合によっては数千万円もの大金が手に入りますが、そのことで気が大きくなってしまう人がいます。大金が手に入ると思うと「家賃が多少高くても大丈夫だろう」という風に考え、高めの家賃設定をしてしまうこともあるでしょう。

しかし、いざリースバックで得た売却代金を使い切ってしまうと、自身の収入だけでやりくりをする必要が出てきて、途端に家賃の支払いが困難になる恐れがあります。

売却代金は浪費することなく計画的に運用し、自身の収入だけでも余裕を持って支払える家賃設定にすることが大切です。

リースバック後の再契約で家賃が上がった

リースバック後に賃貸の再契約を結ぶ際、家賃が上がることがあります。リースバックをした当初は資金的に問題がなくても、再契約によって家賃が大幅に上がると家計は逼迫してしまいます。もともと余裕がなかった場合には、毎月の固定支出が上がることで、家賃滞納につながりやすいです。

ですが、これはリースバックの賃貸契約の際に再契約時に家賃の変更はしない旨をリースバック会社と交渉することで回避できます。口頭でのやり取りではなく、しっかりと書面に残すことが大切です。

家賃滞納をしないための回避策

ここでは家賃を滞納しないための回避策について解説します。家賃を払えない事態になることは、予期せず誰にでもあり得るという認識を持ったうえで、前もって万が一のときに備えることが大切です。

以下の対策をするだけでも、安心してリースバックを利用できるようになるでしょう。

1年分の生活費用を貯蓄する

できれば1年分の生活費用は、貯蓄しておくようにしましょう。病気や事故、リストラ、破産など思ってもみなかったことが突然起きることも想定しておくことが大切です。

万が一のことが起こった時に復帰や転職、事業再興までの資金が準備できていると安心できます。1年分の生活費用を貯蓄することは容易ではありませんが、リースバックの家賃滞納を誰にでも起こりうるリスクと認識し、対策しておきましょう。

リースバックの売却代金を計画的に使用する

リースバックで得た売却代金は計画的に使用しましょう。不動産の売却代金は物件によっては数千万円にも上ることがあり、普段手にすることのない大金を得たことで金銭感覚が鈍りやすくなります。

収入が増えると、それに伴い支出も増えるといわれる「パーキンソンの法則」というものがあります。宝くじの高額当選者の自己破産率が高いように、リースバックによって一時的に大金を手にすることで、金銭感覚が麻痺してしまう危険性があるのです。

売却代金を計画的に使用するためには、使用使途をあらかじめ決めておくようにしましょう。家賃設定をする際にも、高額にならないように注意する必要があります。また、万が一売却代金がなくなった場合でも、自分自身の収入でやりくりできるように家賃を設定することも大切です。

再契約時の家賃上昇を防ぐ

定期借家契約でリースバックを行うと、再契約の際に家賃の値上げをされるケースがあります。家賃の値上げに応じない場合には、再契約ができず退去を迫られることにもなりかねません。

再契約時の家賃上昇を防ぐためのポイントは「普通借家契約」と「特約の付加」です。それぞれのポイントをみていきましょう。

借主に有利な普通借家契約にする

1つ目は、借主に有利な普通借家契約にすることです。賃貸契約には、普通借家契約と定期借家契約がありますが、両者の主な違いは以下のとおりです。

普通借家契約 (借主に有利)定期借家契約 (貸主に有利)
・一般的に賃貸借期間は2年間となることが多い

・賃貸契約の更新が可能(再契約ではない)

・借主側からの中途解約が可能
・賃貸借期間は貸主都合で定められていることが多い(一般的には2年)

・賃貸契約満了後に再契約が可能だが、貸主都合で断ることが出来る

・中途解約をするには一定の条件を満たすか、残期間相当の違約金の支払いが必要

普通借家契約の方が、借主に有利な賃貸契約といえます。定期借家契約との大きな違いは、借主が退去を申し出ない限り、一般的な契約期間である2年が経過しても自動更新となることです。

また、普通借家契約では貸主側に正当な事由がない限り、家賃の値上げを要求できません。貸主側の家賃値上げを拒否したり、貸主側に交渉を要求したりしても契約更新を妨げる要因とはならないため、普通借家契約は借主に有利な賃貸契約といえるのです。

すでに契約済みの方は賃貸契約の種類を確認し、これから契約する方は普通借家契約を選ぶようにしましょう。

賃貸契約時に家賃の値上げをしない特約を付加する

2つ目は、家賃を値上げしない旨の特約を賃貸契約書に付加することです。不動産関係の契約では、借主側が不利にならないよう契約内容を十分に確認する必要があります。

定期借家契約であっても、再契約時に家賃の値上げは行わないという旨の条項を付加してもらうことが大切です。トラブルを避けるために、口頭ではなく必ず賃貸契約書に明記してもらいましょう。

あとになって特約の付加を希望してもできないので、あらかじめ契約書に盛り込んでもらうことが肝心です。

それでも家賃を滞納してしまう場合

家賃を滞納してしまう理由やきっかけ、その対策が分かっていても滞納してしまうことはあります。その場合は、以下の対応をしましょう。

リースバック会社に相談する

まずはリースバック会社に相談しましょう。相談の際には、滞納の理由や経緯もしっかりと伝える必要があります。事情次第では、家賃の支払いを猶予してもらえます。

何も相談せずに家賃を滞納すると、貸主との信頼を損ねてしまい、その後の相談や交渉の余地がなくなってしまうので注意しましょう。

住居確保給付金を利用する

住居確保給付金を利用する方法もあります。住居確保給付金とは、離職や廃業などの理由によって生活が困窮し、住居を失う恐れのある人に対して家賃相当額を支給する制度です。

支給期間は原則3ヶ月ですが、一定の要件を満たすことで最大9ヶ月まで延長ができます。このような支援制度も念頭におきながら、万が一のときに備えることが大切です。

参考:厚生労働省 住居確保給付金の制度概要

記事の執筆者

長井一記
長井一記 / 任意売却ヘルプセンター センター長

少年期に経験した競売と、不動産業界にて数多くの不動産売買に従事した経験から、少しでも多くの方を競売から救うことのできる「任意売却ヘルプセンター」を設立。
ご相談者さまに寄り添い、任意売却・リースバック・その他の解決手段で競売回避を実現します。

趣味:登山/ジム/地域ボランティア

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