任意売却後の残債はどうしたらいい?返済方法から残債を少なくする方法を紹介

任意売却が成功しても、生活を立て直すという大きな課題が引き続き残っています。 任意売却で引越し費用は多少補助されるものの、家賃や食費などの生活費は自身で用意しなければなりません。失業状態にある場合は再就職をしなければ収入も途絶えているため、早急に生活再建に取り組む必要があります。

ここで直面する大きな障害があります。それが残債です。
任意売却後は返済しきれなかった住宅ローンや借金が残ることが多く、その返済義務が残ります。

本記事では残債が出てしまった場合に、どうしたらよいのか、支払う金額を圧縮する方法やどうしても支払えないといった場合の対応方法もあわせて紹介してまいります。

残債務(残債)とは?

不動産を売却した金額よりも住宅ローンや借金の金額が多いため、完済することが出来ずに残ってしまった債務のことです。

”本来的な意味は、不動産の売却に関わらず、返済しきれなかった債務のことを指します”

任意売却後に残債が出るケース

借金が住宅ローンのみであれば、任意売却によって得られた不動産の売却代金で完済できる可能性もあります。 ですが、他金融機関や消費者金融などからの借入が複数ある場合は、不動産売却代金では完済に足りず、残債が出ることになります。

残債は支払う必要がある?

任意売却は競売を避けて、不動産を高く売却できる方法ではありますが、残った債務が免除されることはありません。任意売却したため、担保となっていた不動産は無くなりますが、無担保債権という扱いで変わらず債務(残債)は残ります。

返済を滞納すると給与や預金差押えの危険も

任意売却後は資産や金銭も残っていない状態であることがほとんどです。 もう差押えられるものが無いからと、無担保債権となった残債の返済を滞納しても問題ないと考えるのは危険です。

たしかに債務を回収するための担保は無い状態ですが、債権者は所定の手続きを経て裁判所へ申し立てることで、債務者の給与や預金口座を差し押さえることができます。

給与が差し押さえられた場合、おおむね手取りの4分の1を上限として債権者に自動的に返済がされます。回数も一度切りではなく、原則として残債の完済まで給与差押えは続きます。

預金口座が差し押さえられた場合、強制執行や滞納処分の都度差し押さえされます。 差し押さえられ回収される金額は残債の金額が上限となるため、仮に残債が300万で預金残高が350万ある場合は300万が回収され50万だけが残る形となります。

連帯保証人へ督促状が届くことに

給与や預金口座の差し押さえができない、または残債の回収には到底足りない場合、連帯保証人に督促の連絡がいくことになります。

任意売却を実施する際にも、連帯保証人に出来るだけ迷惑がかからないように努めたにも関わらず、残債の対応で結局迷惑をかけてしまっては元も子もありません。 連帯保証人への督促がいかないようにするためにも、残債の支払方針は債権者と交渉のうえ定め、債務不履行とならないように注意しましょう。

任意売却後の残債の返し方

残債の返済は、通常の借金返済と異なり返済期間や金額は債権者との交渉次第で大きく異なります。

残債の返済方法は主に以下の3通りです。

一括返済

すでに期限の利益を喪失しているため、原則としては一括返済を求められます。
しかしながら、任意売却時の債権者交渉で債務者に返済能力が無いことは理解しているため、一括返済になることはほとんどありません。

分割返済

毎月の返済額を定め、残債が完済するまで分割して返済していく方法です。
残債額が多いと完済までが長期化してしまい、任意売却をしたのに生活再建が一向に進まない状態になる可能性が高まります。

そこで、次に紹介する返済方法がもっとも多く採用されています。

家計状況に応じた分割返済

債権者側は「可能な限り多くの残債を回収したい」と考えます。しかし債務者に支払いきれない金額を請求し、自己破産をされては回収の見込みがなくなってしまいます。
そのため、任意売却をした後の債務者の生活再建に影響が出ない範囲、返済が苦しくならない範囲での分割返済を認めてくれます。

毎月の返済額は債務者の収支バランスや、家庭事情を考慮して交渉のうえ決定されます。 一般的には5千円~3万円程度になることが多いです。

残債を少なくする方法は2つ

残債を少なくする方法を理解するためには、残債がどのように計算されているのかをまず理解する必要があります。

【残債の計算式】
「元の借金(住宅ローンや他借入含む) ― 不動産の売却金額 = 残債

ここでは少しでも残債を減らし、返済していくための方法として2つを紹介します。

不動産の売却金額を最大化させる

不動産の売却金額を大きくすることができれば自然と残債も少なくなります。 売却金額を最大化させるためには、任意売却時の販売活動が重要です。

任意売却の成功を大きく左右するポイントは下記の3つです。

  1. 任意売却専門の不動産業者に依頼をすること
  2. きれいな室内を維持し、購入希望者の内覧には快く応じること
  3. 債権者からの連絡は無視せず、誠意ある対応をすること

関連記事:任意売却の流れと実施できる期間を解説!成功のためのポイントも紹介

残債の利息と遅延損害金を交渉する

もう一つの方法は、残債そのものが増え続けることがないようにすることです。
通常、残債に対しても利息と遅延損害金が加算されていきます。 とくに遅延損害金の利率はとんでもなく、元金に対して14.6~20%が設定されるケースが一般的です。

残債が多いと、毎月の返済額以上に利息と遅延損害金が膨らみ続け、返しても返しても増える一方という事態に陥りかねません。 そのため債権者も残債に対する利息や遅延損害金については交渉に応じてくれやすく、免除されるケースも少なくありません。

残債返済の交渉材料は生活状況報告書

残債の返済金額や期間、利息と遅延損害金の交渉をするにしても一方的な主張だけでは債権者も首を縦に振ってはくれません。 自身の家計や返済能力を客観的に証明するためにも「生活状況報告書」を作っておくことが重要です。

生活状況報告書には以下の情報を記入することになります。

  1. 収入情報
    債務者の収入源や収入の額を詳細にします記入します。給与、事業収入、年金、社会保障などの収入情報が含まれます。
  2. 支出情報
    債務者が日常生活に必要な支出を記入します。家賃、光熱費、食費、医療費、通信費、教育費などの支出が含まれます。
  3. 資産情報
    債務者が所有している資産(不動産、預貯金、車など)や投資額、財産の詳細を記入します。
  4. 債務情報
    債務者の借金の状況を記入します。借入金の種類、金額、債権者の情報などが含まれます。
  5. その他
    離婚や持病、介護など就業や収支に大きく影響する可能性のある情報を記載します。

生活状況報告書の提出にはそれを証明するための証拠(エビデンス)の提出も同時に求められます。

残債の時効はいつ?

残債の時効が成立するのは「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」または「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」のいずれかが経過したタイミングとなります。

ですが、債権者も時効の成立まで何もせずに待っているわけではありません。 時効の成立要件である期間については、債権者が裁判所に対し強制執行の申し立てなどを起こすと、その時点をもって時効期間がリセットされます。

つまり、債権者が回収する意思を明確に持っている場合は、残債の時効を成立させることはほとんど期待できないということです。

どうしても残債の返済ができない場合

生活状況によっては、どうしても返済ができないほど家計が苦しい場合があります。 このような場合は法的手続きも含めて検討するほうがよいでしょう。

ここでは「個人再生」と「自己破産」について解説します。

債務をさらに圧縮できる個人再生

個人再生は債務を最大5分の1までに圧縮し、その債務を3~5年かけて返していく債務整理の方法です。 仮に債務が500万円ある場合、100万円まで債務が圧縮されたあと、3年かけて100万円を返済する(月の返済額は約2.8万円)こととなります。

この流れだけを見ると、返済方法の一つである「家計状況に応じた分割返済」と大差がありません。
個人再生は弁護士を通じて裁判所へ申請する法的手続きです。一度受理されれば余程のことが無い限り、履行しなければなりません。

残債の金額と債権者の人数にもよりますが、頑張って返済する方向でいく場合は個人再生よりも「家計状況に応じた分割返済」を選択されることを推奨します。

債務が帳消しになる自己破産

自己破産をすると住宅ローンや消費者金融からの借入金など、すべての債務が免除されます。※税金や公共料金(電気水道ガスの滞納分等)は免除されません

債務が免除されますので、自己破産後の支払義務はありません。生活再建をするにはこのうえない制度ではありますが、債務に連帯保証人が付いている場合は注意が必要です。

債務が免除されるのは自己破産をした当人のみですから、連帯保証人は債務が返済義務が残り続けます。自己破産をする検討する際にはまず、債務に連帯保証人が付いていないかを確認したうえで検討するようにしましょう。

まとめ

任意売却後の生活再建をしっかりと進めるためにも、残債の対応は慎重に行わなければなりません。 残債が出てしまった場合には、返済していけそうなのか、返済の余裕は全くないのかを自身の生活状況を把握したうえで判断する必要があります。

また個人再生や自己破産などの法的手続きを取る場合は、弁護士や司法書士に依頼する必要があります。 そのような場合でも安心して生活再建が進められるよう、任意売却ヘルプセンターでは弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーと業務提携をしていますので、任意売却を検討される際はぜひご相談ください。

記事の執筆者

長井一記
長井一記 / 任意売却ヘルプセンター センター長

少年期に経験した競売と、不動産業界にて数多くの不動産売買に従事した経験から、少しでも多くの方を競売から救うことのできる「任意売却ヘルプセンター」を設立。
ご相談者さまに寄り添い、任意売却・リースバック・その他の解決手段で競売回避を実現します。

趣味:登山/ジム/地域ボランティア

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