住宅ローンの滞納が一定期間続くと、債権者である金融機関は「このままでは貸付金である住宅ローンの回収が難しい」と判断し、抵当権を設定している不動産を強制的に売却して債権の回収を行います。
これを担保不動産競売と言います。
競売にはもう一つ種類がありますが、一般的に競売と言えば担保不動産競売を指します。
競売という制度で不動産を売却されてしまうと、債務者にとって数多くのデメリットが生じてしまうことはご存じでしょうか。
ここからは競売ごとの違い、特に担保不動産競売のメリットやデメリット、どのような流れで競売に至ってしまうのか、またその理由などについて解説していきます。
2種類の競売と公売
競売には2つの種類があります。それは担保不動産競売と強制競売です。
また、競売と似た債権回収の方法として公売と言われる制度があります。
これらの制度にはどのような違いがあるのでしょうか。
担保不動産競売とは?
担保不動産競売とは、主に住宅ローンの支払いを滞納したことによって、借り入れ先である金融機関(債権者)が抵当権を行使し、裁判所を通じて強制的に不動産を売却する競売のことを指します。
一般的に「競売」というと担保不動産競売を指します。
一度競売に向けて進み始めると、住宅ローンを完済する以外には競売または任意売却のいずれかにて不動産を売却し、得られた売却代金を住宅ローン等の返済に充てることとなります。
強制競売とは?
強制競売とは、公正証書や裁判の判決などによって不動産や動産などの資産を競売にかけ債権を回収することを指します。
担保不動産競売との明確な違いは「抵当権が設定されている担保(不動産)があるか」という点です。
抵当権の設定がない無担保ローンや、借り入れではありませんがマンション管理費などを滞納し続けた場合に強制競売は行われることがあります。
もとより抵当権が設定されていない分、強制競売を行うには債権者側で行う事前準備に手間とコストがかかるという側面があります。
もうひとつの競売?公売とは
公売とは、債権者が国税庁や地方自治体の際に、国税徴収法に則って行われる債権の強制回収方法のことです。
競売との違いは債権者の種別にあります。
競売の場合は債権者が金融機関や民間企業、個人などですが、公売の場合は債権者が国税庁や地方自治体になります。
これは国税や地方税など税金の支払いを滞納している場合、その債権者は課税主体である国と地方自治体であるためです。
また公売は国税徴収法に則った対応であるため、裁判所による判決が不要となります。
住宅ローンの滞納などでは債権者から債務者へ、支払いの督促状などが届きそれを無視し続けると競売申立通知が届きます。
ですが、税金の滞納では督促状を無視し続けるといきなり資産を差し押さえられる場合があります。
競売のメリット
強制的に不動産を売却されてしまい、債務者にとってデメリットの多い競売にも1つだけ明確なメリットがあります。
競売唯一のメリット、それは「自身が何もしなくても売却が完了すること」です。
自宅を売却するための準備に始まり、買主を探すことや売却価格を設定することなど、不動産の売却に通常必要な対応をせずに売却を完了することができます。
一方で、何もしなくても売却が完了するということは、自身で売却をコントロールすることができないことと同義でもあります。
このためコントロールできないことをメリットあるいはデメリットと感じるかは債務者の状況や考え方によって異なります。
競売のデメリット
競売のデメリットの中でも、債務者にとって特に影響が大きいデメリットを解説します。
競売のデメリットを知りなぜ「競売は避けるべき」と言われるのかを理解しましょう。
不動産売却後の残債が多くなる
競売による不動産売却価格は市場価格の5~7割程度になることが一般的です。
市場価格より低くなってしまう主な理由として
・売り出しを明示する公告の範囲が狭く競争が起きにくいこと
・内覧などが出来ないため購入者側のリスクが高く、価格が吊り上がらないこと
の2点があります。
通常売却では、物件を取り扱う不動産会社が広告や自社HPなどで積極的に販売活動を行います。
一方で競売では裁判所内の競売物件閲覧室への掲示および不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)、新聞などへの公告のみとなり通常売却と比べ認知される機会が少なくなります。
また買主側の視点に立つと、競売物件は内覧することができないため詳細な状態を知ることができず、その分のリスクを考慮に入れた入札金額となります。
このように認知される機会の少なさと、価格競争が起こりにくい環境が重なることから売却価格が安くなる傾向にあるのです。
不動産売却価格が低くなるということは、つまり住宅ローンの返済に充てられる金額も少なくなりますから債務として残る金額は多くなってしまいます。
知らない間に債務額が増えていく
借りてもいないのに債務額が増えていくというのはどういうことでしょうか?
実は競売を行うには諸費用がかかり、また競売が始まるまでの間にも債務が増えていく仕組みがあるのです。
競売申立費用
競売にかかる諸費用のことをまとめて「競売申立費用」と言いますが、債権者が一時的に立て替えているだけで、実際に負担をするのは債務者です。
とはいえ、債務者が競売申立費用を支払える状態にないことは債権者も理解していますので、競売によって得られた売却代金から競売申立費用が差し引かれることとなります。
手元からお金を支払っている訳ではないため実感が沸きにくいですが、競売申立費用は最低でも100万円程度はかかるので、競売になると余計な負担が知らずに増えているということを理解しましょう。
任意売却を行うと競売を避ける事が出来ますので、競売申立費用を負担することはありません。
任意売却がご相談者さまにとって、どのようなメリットがあるかはこちらからご確認いただけます。
遅延損害金
遅延損害金も知らない内に増えていく債務の代表例です。
住宅ローンを滞納した翌日から遅延損害金は発生します。
その利率は年14.6~20%程度となっており、仮に滞納時の住宅ローンの残りが2000万円あったとすると
2000万円(住宅ローン)×0.146(年利)=292万(1年あたりの遅延損害金)
となります。
競売による不動産売却の完了は、住宅ローンを滞納してから約1年以上を要しますから、最低でも1年分の遅延損害金が債務額に上乗せされてしまうのです。
任意売却では債権者との交渉次第で遅延損害金の免除や大幅な減額に持っていくことが可能です。
競売申立費用、遅延損害金、いずれも借りてもいないのに多大な金額が債務として上積みされてしまいます。
近隣住民に知られる恐れがある
自宅が競売にかけられてしまったという事は、出来るならば隠しておきたいと考えるのが自然なことと思います。
しかしながら競売にかけられる過程において、裁判所から選出された執行官と不動産鑑定士が不動産の価値を決めるための現況調査を行います。
現況調査では公告に使用するための写真撮影や建物、土地の計測などがあるため、周囲から見ても普段見慣れない光景に映ることでしょう。
また撮影された写真等は公告にて一般公開されることとなるため、裁判所内の競売物件閲覧室やBIT、新聞などで確認出来るようになります。
このように現況調査時、公告時に近隣住民に対して自宅が競売にかけられていることが知られる恐れがあります。
引越し時期を調整できない
一般的に、引っ越しをする際には退去日もしくは入居日のいずれかを先に決めて調整していくことかと思います。
しかしながら競売によって不動産が売却され、退去を迫られる場合はそうはいきません。
不動産の所有者が競売の落札者に変わると、現所有者に対して指定の期日までに家を明け渡すよう通知がされます。
肝心なのは、指定の期日が場合によっては数週間から1カ月程度であるということです。
1カ月以内に転居先の物件を見つけ契約し、家財一式を伴い引っ越すのは簡単なことではありません。
さらには、引っ越す事が出来ずに指定期日を過ぎると「不法占拠」となるため強制退去をさせられることとなります。
このような事態を避けるには、競売が決まった時点で引っ越しの計画を立てるか、競売そのものを回避するしか選択肢はありません。
競売を回避できる任意売却とは?
実のところ、競売は債務者および債権者の両方が損をすることが多く、お互いが望まない結果になりやすいという事実があります。
特に債務者は、競売後に残ってしまった住宅ローン残債の多さによって生活基盤が大きく崩れることが想定されます。できる限り損をしない形で不動産を処分することが重要なのです。
このような悪循環の発端となる競売を回避できる手段として「任意売却」があります。
任意売却とは、住宅ローンを完済する目途が立たない状況でも債権者と交渉することで抵当権を外してもらい、市場価格に近い金額で不動産を売却することです。
競売と異なり市場価格で売却するため、適正な売却金額が見込めます。
また引っ越し費用が補助されたり、リースバックで自宅に住み続けたりするなど、ご相談者さまに寄り添った対応が期待できるのも任意売却の特徴です。
競売の流れ
住宅ローンを滞納し始めたあと、どのような流れで競売になり自宅を退去するに至るのか、競売の流れをイメージしてみましょう。
期限の利益の喪失
住宅ローンを滞納し始めてから数ヵ月の間は督促状や催告書の書面による通知、電話による返済の連絡が続きます。
住宅ローンの滞納から6ヵ月が経過すると、期限の利益を喪失し一括返済を求める通知が届くようになります。
期限の利益とは住宅ローンを毎月決められた金額だけ返済する権利、つまり一括で返済しなくてよい権利のことを指します。
保証会社による代位弁済
期限の利益を喪失すると一括返済を行わなければいけないのですが、毎月の住宅ローン返済を滞納している状態では数千万円もの大金を用意することは出来ません。
こうなると、住宅ローンを組む際に契約していた保証会社が債務者に代わり金融機関へ一括返済を行います。
これを代位弁済と言います。
代位弁済が行われると、住宅ローンを借りていた金融機関から保証会社に債権者が変わり、今度は保証会社から一括返済の要求を受けるようになります。
競売開始決定通知書が届く
保証会社からの一括返済要求を無視し続けていると、債権者である保証会社は裁判所に対して競売の申立てをします。競売の申立てが正式に受理されると競売開始決定通知書という形で債務者宛に競売にかけられた旨が通達されます。
現況調査が行われる
競売開始決定通知が届いてから1~2カ月が経過する頃、裁判所の担当執行官と不動産鑑定士が2人1組となって現況調査のため競売対象物件に訪れます。
現況調査では競売にかけられる不動産の外観や内観の写真撮影を行い、場合によっては居住者へ簡易的な質問をされることもあります。
なお、現況調査は訪問日時が事前に書面にて知らされますが日時調整などを行わず当日を留守にすると、担当執行官が鍵の業者を呼び自宅を強制解錠されてしまいます。
このうえ業者に支払う料金は競売申立費用の一部として債務者に請求されることになりますので、無断で家を留守にしないようにするのが賢明です。
競売対象物件情報が公告される
現況調査によってまとめられた競売対象物件の情報は現況調査報告書、評価書、物件明細書という形で裁判所内の掲示場と不動産競売物件情報サイト(通称:BIT)に公告されます。
これらの書類には対象物件の外観写真、内観写真に加え、修復歴や特筆事項、売却基準価額が記されています。
期間入札の開始
期間入札の開始は公告から約2週間後となることが多く、入札期間は約1週間です。
競売対象物件への入札希望者はこの期間中に入札を行うことが可能です。
開札と落札者の決定
期間入札の終了から数日~1週間が経過する頃に開札期日が訪れます。
開札が行われると最も入札金額の高かった入札者が落札者に決定されます。
この日を迎えてしまうと、たとえ任意売却が進行中であったとしても任意売却による不動産の売却は不可能となります。
競売対象物件の売却
落札者が決まると裁判所が落札者の審査を行います。
審査の結果、問題ないと判断されると「売却許可決定」が下され、落札者は代金を裁判所へ納付することで、競売対象物件を購入することができるのです。
代金の納付と同時に不動産登記の移転手続きがされ、所有者も落札者に変わります。
明け渡し要求 ~ 強制退去
所有者が正式に変わると、債務者である現居住者は指定された期日までに家を明け渡す必要があります。
明け渡しを拒んで居座っていると裁判所によって強制退去をさせられることとなります。
強制退去は警察の力なども動員され、居住者全員の退去および家財一式の撤去が強制的に実施されますので、前もって引っ越しの計画を立てるか、競売にならないよう任意売却の検討を進めましょう。
競売にかけられる理由
競売にかけられる最も多い理由は、住宅ローンの返済を滞納したことによるものです。
債務者からの毎月の返済が滞ると、債権者としては担保である不動産の売却を行い、債券を回収する必要があります。
その他には事業資金の借り入れのため自宅を担保に入れていた場合や、税金の滞納などでも競売にかけられる理由となります。
滞納してしまう理由
住宅ローンを滞納してしまうことが競売になってしまう主な理由であることが分かりました。では、なぜ住宅ローンを滞納してしまうことになるのでしょうか。
外的要因や内的要因など様々な要因がありますが、代表的な理由は3つあります。
- 収入の減少
- 事業の失敗
- 離婚
この3つの理由について解説します。
収入の減少
住宅ローン滞納の一番多い理由です。
会社の経営不振による給与減少やボーナスカット、リストラなどの影響から収入が大幅に減少することで、生活を維持するために住宅ローンの滞納が始まってしまうケースがあります。
また、住宅ローンの滞納をしないようにと消費者金融からお金を借りる方がいらっしゃいますが、収入が回復する兆しがない状態での借り入れは家計に火に油を注ぐ事態となります。
借金を返すために借金をするという負のサイクルは絶対に始めないようにしましょう。
事業の失敗
経営者や個人事業主など、自身で事業を営んでいる方は事業資金を借りるために自宅や店舗を担保に入れているケースが少なくありません。
事業が上手くいかず資金繰りが苦しくなり、事業者ローン(ビジネスローン)の返済が遅れるようになると、住宅ローンと同様に債権者によって担保不動産を競売にかけられることとなります。
離婚
収入に関する理由以外でもっとも多いのが離婚を理由としたものです。
同じ空間で共に暮らしていく中、夫婦の不仲、価値観の不一致、すれ違いなど、さまざまな理由によって離婚に至ることがあります。
離婚の際に問題となるのが、住宅ローンの支払いについてです。
よくあるのは元妻と子供が自宅に住み続け、出ていった元夫が住宅ローンと自身の住居である家賃を支払っているケースです。
ですが、このケースは大抵の場合、長続きしません。
この先十数年、数十年に渡って元夫が住宅ローンを返済し続けることは、金銭的な面や心理的な面で確実ではないと言えるでしょう。
元夫が住宅ローンを滞納し競売にかかってしまえば、住む場所を失ってしまうのは元妻と子供です。
離婚の際は残っている住宅ローンをどのようにするのかを考え、競売だけは絶対に避けるようにしましょう。
任意売却やリースバックではこういった離婚の際の住宅ローン問題を解決することも可能です。元妻、元夫に会いたくない場合も相談員が間に入って任意売却の成功に向けて動きますのでお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
競売の概要や流れ、メリットとデメリットが明確になったことで実際に競売になった場合、自身がどのような状況に置かれるのかをイメージすることが出来たことと思います。
競売に進んでしまえば、市場価格の5~7割で売却されたあげくに競売申立費用と遅延損害金が数百万円の規模で債務に上乗せされてしまいます。
この事実を知ったまま競売にかけられるのを待つ必要はありません。
競売を回避できる任意売却という方法もありますので、より任意売却について学びたい方はこちらからご覧ください。
急いでいる方や直接話を聞いてみたい方は、お気軽にお電話(只今準備中)ください。
任意売却のエキスパートである相談員がご相談者さまに合った任意売却を提案させていただきます。
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