住宅ローン滞納後の流れを解説|12カ月後には競売の危機が!
住宅ローンを滞納し始めると、債権者側は「なんとか支払ってもらおう」「債権を回収しなければ」と動き始めます。ですが、これらの動きや流れというのはそのときになってみないと分かりません。
そこで今回は、住宅ローン滞納後の流れを経過月数に沿って解説していきたいと思います。
また競売を回避するための方法や競売に向けて進んでいくなかで生じる影響についても紹介いていますので、住宅ローンを滞納中の方は自身の状況が今度どのように変化していくのかをイメージしながらご覧ください。
住宅ローン滞納後の流れ
住宅ローンを滞納し始めると、目に見える動きや水面下で進行する動きなど、さまざまな変化が起こるようになります。
滞納期間が長くなるほど競売に近づいていくことになりますので、月ごとの変化を確認していきましょう。
住宅ローン滞納:1カ月目
住宅ローンの滞納1カ月目は、特に大きな問題は起こりません。
1カ月目、つまり1回の滞納であれば口座残高の不足や入金忘れなど、今回限りの場合が多いため債務者側の対応も電話でお知らせする程度です。
再引落日での口座引落し、または支払い請求書での支払いのいずれかでローンを支払うことになります。
なお、1回の滞納でも「遅延損害金」は発生しますので、支払える状況にある場合は早急に支払いましょう。
遅延損害金の利率は金融機関によっても異なりますが、一般的に年利14.6~20%で設定されることが多く、長引けば長引くほど余計な費用が増えることに繋がってしまいます。
住宅ローン滞納:2~3カ月目
住宅ローンの滞納が2回以上続くと、督促状が届くようになります。
督促状には、貸付残高や未払い金、遅延損害金などが事務的な形式で記載された表とともに、督促の内容が伝えられます。
さらに、金融機関からの電話連絡による督促も始まります。無視し続けると悪質な債務者と認識され督促が悪化する可能性がありますので、早めに自身の状況と今後の返済相談をするようにしましょう。
金融機関によってはこの頃から連帯保証人への返済請求を実施するところがあります。
連帯保証人とトラブルにならないようにするためにも、住宅ローンの滞納が続いてしまうような状況であるときは、あらかじめ連絡と相談をしておきましょう。
住宅ローンの滞納と連帯保証人への影響についてはこちらの記事でも解説していますので、ご覧ください。
関連記事:住宅ローン滞納による連帯保証人への影響は?任意売却で最小限にする方法を解説
住宅ローン滞納:4~5カ月目
督促状や電話連絡の対応を無視し放置していると、催告書が送られてきます。
催告書には「支払いしなければ強制手段に出る」旨が記載されており、住宅ローン滞納の場合は担保不動産の競売が強制手段となります。
また不動産がない場合は給与や財産を差し押さえられることもありますので、絶対に催告書は無視しないようにしましょう。
催告書は「内容証明郵便」で送られてくるため法的証拠として利用できます。催告書が送られてくるということは競売に向けた準備をしていると考えたほうがよいでしょう。
住宅ローン滞納:6カ月目
住宅ローンの滞納から6カ月が経過するころには「期限の利益喪失」と「一括弁済」の請求が来るようになります。
金融機関によって期限の利益喪失となる時期は少なからず前後しますが、おおよそ滞納から6~8カ月が経過するころが一般的です。
期限の利益喪失後は一括弁済による住宅ローンの完済か、競売による不動産売却へと進んでいきます。
競売のデメリットと回避する方法については次章で解説します。
”期限の利益とは「分割して支払いを続けることができる利益(権利)」のことを意味します。 住宅ローンは多額のローンを組むことになりますが、その返済は少額を長期に渡って行うことができます。これが期限の利益です。”
”一括弁済とは「一括で返済すること」を意味します。法律用語ですので「一括返済」と意味は同じです。 期限の利益を喪失すると、分割して支払う権利がなくなるため、一括での返済を求められます。”
住宅ローン滞納:7~8カ月目
一括弁済ができずにいると、保証会社が金融機関に対して「代位弁済」を行います。
代位弁済が行われると、金融機関は住宅ローンの回収が完了するため、以後債務者へ連絡をしてくることはありません。
“代位弁済とは、保証会社が債務者に代わり金融機関に対して住宅ローンの残額を一括で返済することです。”
代位弁済後、不動産登記簿上では金融機関から保証会社に抵当権が移転したことが登記されます。
その後、債権者(抵当権者)が変わった旨と一括弁済請求が今度は保証会社から届くようになります。
保証会社からの連絡を無視、または一括弁済請求に応じない場合は、競売開始手続きを保証会社が進めていくことになります。
住宅ローン滞納:9カ月目
保証会社(がいない場合は金融機関)が抵当権者を行使し不動産競売の申請を裁判所に対して行います。
これが受理されると正式に競売開始決定となり、債務者の下へ「競売開始決定通知書」が届きます。
金融機関や保証会社からの連絡を無視し続けていた場合は、急に競売開始決定通知書が届いたと驚かれる方も多く、この段階で自宅を失う危機にあると認識することになります。
競売開始決定がされると、数週間のうちに裁判所から派遣された調査官が訪れます。
訪問理由は不動産の現況調査です。不動産の状態や状況を調査するため、外観のチェックや室内の写真撮影、居住者への質疑応答などが実施されます。
あらかじめ訪問日についての案内が書面で届きますが、これを無視すると指定された日時に調査官がやってきます。
鍵を掛けていても鍵屋に解錠を依頼し入室してきますので、同席できる日時を相談して現況調査を受けるようにしましょう。
なお、現況調査による強制的な解錠は法令で認められており、解錠にかかった費用も競売費用として債務者に請求されます。
住宅ローン滞納:10~11カ月目
現況調査が終わると競売時に必要な情報となる3点セット(現況調査報告書、評価書、物件明細書)が作成されます。
3点セットには、入札者が入札額を検討するに必要な情報が掲載されています。物件情報以外にも、周辺状況や居住状況などが掲載されており、公告されると裁判所とインターネットで誰でも閲覧することが可能です。
またこの頃には債務者の下に「期間入札の通知書」が届きます。
期間入札の通知書には、競売のスケジュールである入札期間、開札期日、売却決定期日、売却基準価格が記載されています。
入札期間
約1週間の期間が設けられており、競売物件を購入したい業者や個人はこの期間内に入札を行います。
開札期日
入札期間内にあったすべての入札を確認し最高額の入札者を落札者と決める期日。
売却決定期日
購入者が決まる期日。
落札者は裁判所による購入審査を通過した後に購入者となります。
審査に通過しない場合もあるため開札期日と売却決定期日は同日ではなく分かれています。
売却基準価額(売却基準価格)
競売の入札基準となる価格です。
売却基準価額は一般的に市場価格の約70%に設定されることが多いです。
また競売への入札は売却基準価額の80%以上で行う必要があることから、落札金額はおおよそ市場価格の60~70%となります。
【売却基準価額の計算式】
市場価格(100)×売却基準割合(70%)×入札下限割合(80~100%)=市場価格に対する売却基準基準価額(60~70%)
住宅ローン滞納:12~13カ月目
3点セットが公告されてから約2週間後、入札期間が始まります。そこから約1カ月後には競落され購入者が決定します。
購入者によっては、早ければ1週間程度で退去要請がされますが、退去に応じない場合は裁判所令で強制執行(退去)させられます。
あらかじめ引越しの準備などをしていないと、住む場所を失うことになりかねません。
また、競落後の売却代金はまず債権者への返済に充てられます。
ですが、売却代金全額を返済に充てたとしても完済できない場合は、残った債務を引き続き支払う必要があります。
支払い能力がない場合は、給与口座や動産の差押えをされる可能性があるでしょう。 また、それでも完済に足りない場合は任意整理や自己破産を検討せざるを得なくなります。
競売のデメリット
ここまで住宅ローンを滞納したときの流れを月ごとに解説してきました。
何もせずにいると競売に向けて一直線に進んでしまいます。 競売のデメリットを理解して、なぜ競売を回避しなければならないかを知りましょう。
関連記事:競売のデメリット
任意売却で競売を回避しよう
競売を回避するためには、一括弁済による住宅ローンの完済か任意売却しかありません。 しかし住宅ローン滞納の現状を考えると、多くの方が任意売却による解決を目指すことになります。
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンなどの債務が残っており、抵当権が設定されている状態の不動産を債権者と交渉して売却する方法のことです。
通常売却では、抵当権が設定されたままの不動産は買主見つかりません。
なぜなら不動産を購入したとしても、売主が債務履行をせず債権者が抵当権を行使してしまうと、買主が所有しているはずの不動産が差し押さえられてしまうからです。
任意売却をすると、債権者と交渉して抵当権を外してもらうことで、市場価格でかつ問題のない不動産売買を行えるようになります。そのため競売を回避することが可能です。
任意売却については以下の記事で詳細を解説していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:任意売却とは?競売を回避できる最終手段
関連記事:任意売却のメリット10選!任意売却を選ぶべき理由がすべて分かる
関連記事:任意売却の流れと実施できる期間を解説!成功のためのポイントも紹介
リースバックとは
リースバックとは、売却した不動産を賃貸契約して住むことができる方法です。
任意売却で売却した不動産の買主と賃貸契約を締結することで、自宅に住み続けることも可能になります。
住み慣れた家を失いたくない、生活環境を変えたくないといった場合には、任意売却とリースバックを組み合わせて住み続けることも選択肢のひとつです。
リースバックについても以下の記事で詳細を解説しています。
住み続けることを検討したい方は、記事を読むことで知識が身につけられます。
関連記事:リースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまですべてが分かる
関連記事:【完全網羅】リースバックのメリット10選を徹底解説
関連記事:身に起こるとやばい!リースバックのトラブル事例7選!危険な罠にかからないための回避策も紹介
まとめ
今回は住宅ローン滞納後の月ごとの流れと身に起こる出来事を解説しました。
住宅ローンの滞納も1回だけであれば大きな問題ではありませんが、月を重ね滞納の期間が長引いていくと、債権者側の対応も厳しくなっていきます。
滞納後の流れを振り返ると
- 住宅ローン滞納後1カ月目 :金融機関から電話連絡や支払請求書が届く
- 住宅ローン滞納後2~3カ月目 :督促状による案内が届く
- 住宅ローン滞納後4~5カ月目 :催告書による案内が届く(競売に向けて動き出す)
- 住宅ローン滞納後6カ月目 :期限の利益を喪失し、一括弁済通知が届く。
- 住宅ローン滞納後7~8カ月目 :保証会社に抵当権が移転し、一括弁済通知が届く。
- 住宅ローン滞納後9カ月目 :競売開始決定され、現況調査官が訪問してくる。
- 住宅ローン滞納後10~11カ月目:公告で3点セットが公開される。期間入札の通知が届く。
- 住宅ローン滞納後12~13カ月目:競売が始まり落札され、自宅から退去する。 となります。
滞納後の流れを知ると、実際にその状況に直面したとしても冷静に対処することができます。
また任意売却を実施する際は、任意売却を専門としている不動産会社に相談をしましょう。
地元に根差した不動産会社や大手不動産会社は通常の不動産売却は得意かもしれませんが、任意売却には別の能力が求められます。それは債権者との交渉力です。
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