住宅ローン滞納者は要注意!自己破産が連帯保証人におよぼす悪影響とは?被害を抑える方法も解説!

支払いができないほどに債務を抱えてしまったとき、自己破産という選択肢が頭のなかをよぎると思います。
たしかに自己破産をすることで自身の債務は免責され、借金という重荷から解放されますが、連帯保証人がついている債務がある場合は注意が必要です。

なぜならば、自己破産をすると連帯保証人に対して悪影響が生じるためです。

そこで今回は、自己破産をしたとき連帯保証人にどのような悪影響が生じるのか?また、悪影響を最小限に抑えるための方法について紹介していきたいと思います。

自己破産とは?

そもそも自己破産とは、債務の完済が難しい場合に、生活に必要な資金以外の財産をすべて売却し、返済に充て、残った債務については免責してもらうことのできる救済制度のことをいいます。

また自己破産は個人単位に適用されるため、家族や配偶者の財産に影響がおよぶことはありません。
ただし連帯保証人は別です。連帯保証人には悪影響がおよぶことになります。

連帯保証人とは?

連帯保証人とは、債務者と同様に債務の履行義務を背負う人をいいます。

「保証人」とあるので誤解しやすいですが、債務者が支払いできなかった場合に支払いを保証するのではありません。
債権者の視点からは債務者、連帯保証人のどちらに請求してもいいことになっていますので連帯保証人は実質的に債務者と変わりがないのです。

そのため、いざ債務者が自己破産をしてしまうと、その影響で連帯保証人に大きな負担がのしかかってきます。

自己破産が連帯保証人へおよぼす悪影響

連帯保証人へおよぶ悪影響を理解するうえで、まずは「保証人」と「連帯保証人」の違いを理解しておきましょう。
この違いを理解することで、なぜ連帯保証人に悪影響が生じるのかが理解しやすくなります。

保証人と連帯保証人の違いとは?

連帯保証人という言葉が耳になじんでいるのは、世間一般に保証人を求められる場合は連帯保証人を指定されることが多いからです。
一方、債務を連帯しない通常の「保証人」も存在します。それでは両者の違いとは何なのでしょうか?
「保証人」にあって「連帯保証人」にはない2つの権利とひとつの利益についてみていきましょう。

連帯保証人には催告の抗弁権がない

催告の抗弁権とは「債務者からまずは先に回収してください」と言える権利のことです。
読み替えると、債権者からの催告(支払い請求)に対して抗弁(債務者から先にして)する権利とも言えます。

連帯保証人にはこの催告の抗弁権がありません。
そのため、債務者が自己破産しているか・していないかに関わらず、債権者から「債務を返済してください」と言われれば返済する義務があります。

一方、保証人には催告の抗弁権があります。
ですので、保証人が債権者から「債務を返済してください」と言われたとしても、「先に債務者から回収してください」と言う事ができるのです。

連帯保証人には検索の抗弁権がない

検索の抗弁権とは「債務者に返済に充てられる資産があるのにこちら(連帯保証人)に返済請求しないでください」と言える権利のことです。

催告の抗弁権と共通する部分(先に債務者から回収してくださいという意味など)も多く違いが分かりにくいですが、検索の抗弁権は権利を行使するのに準備が必要です。
どのような準備かというと、この権利を実行するためには、債務者が返済に充てられる資産を所有していることを債権者に証明する必要があります。

いずれにしても連帯保証人には検索の抗弁権がないため、たとえ債務者が債務を完済できるほどの財産を間違いなく持っているということが証明できる状態であっても、債権者から要求されれば返済する必要があります。
※見解上の話であり、実際は債権者側も債務者からの回収を優先することが多いです。

連帯保証人には分別の利益がない

分別の利益とは「債務全額を分別(保証人の頭数で均等に)することによって、1人あたりの負担が軽くなる」という利益のことです。

たとえば債務者が返しきれなかった1,000万円の債務が残っていたとして、保証人と連帯保証人がどのように負担をすることになるのかをそれぞれみていきましょう。

【保証人が5人の場合】
分別の利益が享受されるため、保証人の人数で債務額を割った金額が、保証人1人当たりが負担する上限金額となります。

1,000万円÷5人=200万円
保証人1人当たりが負担する上限金額は200万円となる

【連帯保証人が5人の場合】
分別の利益が享受されないため、連帯保証人全員はそれぞれが1,000万円の債務を負います。ですが、合計金額が5,000万円になるということではありません。
5人のうち誰かが1,000万円の返済を完了させると債務自体がなくなるため、残り4人の連帯保証もなくなります。

以上が保証人にあって、連帯保証人にはない2つの権利とひとつの利益です。

このように、連帯保証人はたとえ債務者が自己破産をしていなかったとしても、債権者の判断次第で返済を要求されれば応じる必要があるのです。
とはいえ、通常そのようなことは起こり得ません。ですが、債務者が自己破産をすると確実に連帯保証人に対する支払請求が実施されます。

連帯保証人も自己破産の危機に直面する

債務者が自己破産を弁護士に依頼すると「受任通知」という書類が債権者に届きます。
この段階で、債権者は債務者に対して督促や催告による返済請求をすることができなくなってしまいます。
すると、債権者は連帯保証人に対し返済請求の連絡を行います。

このとき、ほとんどの場合で「一括弁済請求」がされます。文字通り「一括で返済してください。」という意味です。

そして、連帯保証人がこの要求に応じられず返済ができない場合は、連帯保証人も自己破産をして債務の免責を受けるほかなくなります。

自己破産をすると、所有している自宅などの不動産や20万円以上の値が付く動産などはすべて換価の対象となります。
財産と呼べるものはなくなり、生活に必要なものを除き手元には最大で現金99万円までしか残すことができなくなるでしょう。

連帯保証人には、大切なご家族や信頼のある友人にお願いしてついてもらっていることと思います。できる限り自己破産によって連帯保証人に迷惑がかかるような事態は避けたいと考えたとき、自己破産以外の選択肢には何があるのでしょうか。

自己破産を回避して連帯保証人への被害を抑える方法

自己破産は自分の身を守るには有用な制度ですので活用しない手はありません。
しかし、その一方で連帯保証人には多大なる迷惑が掛かってしまいます。
できることなら自己破産をしないで現状の問題を解決するのがベストですが、それにはどのような方法があるのでしょうか?

自己破産ではない解決の方法としてあげられるのが、任意整理と個人再生の2つです。
それぞれの特徴を解説していきますので、自身の状況に照らし合わせてどちらが適切かを考えてみましょう。

借金返済がしやすくなる任意整理

債務整理のなかでも、もっとも簡単な形式で実行できるのが任意整理です。
任意整理は裁判所を介する必要がなく、依頼した弁護士を介して債権者と交渉をすることができます。
基本的には将来に渡って発生するであろう利息をカットすることが交渉の落としどころになります。
利息の支払いがなくなることで返済金はすべて元金に充てられるため、借金返済のスピードが格段に上がります。

任意整理を行った場合は、おおむね3~5年で完済できる返済金額が設定されます。
そのため、多額の借金がある場合はむしろ月の返済額が上がってしまうケースがあるので、任意整理の効果を活用しにくいでしょう。
このようなときは任意整理ではなく個人再生を検討する必要があります。

借金を大幅に減額できる個人再生

個人再生とは、借金を5分の1~10分の1程度まで減額し、減額後の借金を原則3年で完済する債務整理のことです。
任意整理と違い、裁判所からの認可を得る必要があることと、元金そのものが大幅に減額される点が特徴となっています。

個人再生をすると本来、全債権者に対してその旨の通知と交渉が行き届きます。
このとき、自宅に住宅ローンを組んだ金融機関などから抵当権が設定されていると、抵当権を行使され競売により自宅を売却されてしまうおそれがあります。

そこで活用できるのが、個人再生の「住宅ローン特則」というものです。

住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンを組んでいる金融機関のみを個人再生の対象外とすることができます。
個人再生の対象外となるため、住宅ローンの支払いはそのまま継続することができますから、抵当権を行使され競売にかけられるような危機に陥ることはありません。
また、同様に連帯保証人に返済請求がいく可能性もほとんどありません。

しかし、ここで注意したいポイントがあります。
住宅ローンにおける連帯保証人への影響は住宅ローン特則を適用することで回避可能ですが、他の債権に関してはその限りではありません。

消費者金融や事業ローン、カードローンなどに連帯保証人をつけている場合、個人再生をすることによって債務者からの回収が困難になった一部の債権を回収しようと、債権者が連帯保証人へ返済請求をすることになります。
そのため、個人再生の場合であっても連帯保証人への事前の連絡は行ったほうが良いでしょう。

住宅ローン要因の自己破産を回避する方法

自己破産をする方のほとんどは多重債務であることに加え、給与減少や失業などによって収支のバランスが崩れてしまい、どうしようもなくなった結果として自己破産を選択されます。

そのなかでも自宅を所有している方に起こりやすいケースとしては、収支のバンランスが崩れ、住宅ローンの支払いができずに消費者金融から借入、借金を住宅ローンの返済に充てるということを繰り返すうちに、多重債務に陥り自己破産となるケースです。

このように住宅ローンの返済が要因となる場合には、自己破産や債務整理以外にも2つの解決方法があります。

1.住宅ローン返済中でもできる任意売却

任意売却とは、抵当権が設定されていて通常は売却ができない不動産を売却する方法のことです。
どのように売却するのかというと、所有者からご依頼いただいた任意売却の専門家が債権者と交渉しその結果、抵当権を外してもらうことで、市場価格で不動産を売却することができます。

自宅に抵当権が設定されている多くの場合は、住宅ローンを借りている金融機関からのものですので、住宅ローンの返済が滞ると、自己破産をまたずに競売にかけられてしまうおそれがあります。
競売で不動産が売却されてしまうと、市場価格の70%程度でしか売却できず、所有者にとって損の多い結果となります。

任意売却をすることで、市場価格で売却でき、もし住宅ローンが完済できなかった場合でも、その後の支払いは債権者と交渉して金額や期間など猶予をいただける可能性があります。

また、任意売却によって住宅ローンという大きな債務がなくなれば、他の消費者金融からの借入などは任意整理で利息をカットし、元金のみの返済にすることで完済が目指せるかもしれません。

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2.自宅売却後も住み続けられるリースバック

自己破産、競売、任意売却、どの形で不動産を売却したとしても、住み慣れた自宅を手放してしまうことになりますが、リースバックを活用すると売却後も自宅に住み続けることができるようになります。

リースバックとは、不動産を売却する際に新しい所有者の方とあらかじめ「売却した自宅を賃貸として貸してもらう」ことに合意していただき、不動産の売買および賃貸借の契約をすることで、自宅を売却した後でも引越しをすることなく、そのまま住み続けることができる方法のことです。

このため、購入いただく方は「自身の居住用ではなく、投資目的の個人または法人」を探さなければなりません。

また、リースバックのもっとも有用な使い方は任意売却と組み合わせることです。

任意売却については上記で説明したように、市場での売却活動ができるようになります。
つまり、誰に売るのかという選択は自己破産や競売に比べて自由度が高く、また債権者と交渉できるという特徴を活かして、リースバック希望であることも交渉の範囲となります。

一方で、自己破産の換価による売却では、基本的に最大限債権者への弁済に充てられるようできるだけ高い購入金額を示した方へ売却することになります。
ですので、自己破産者のリースバックという希望が通ることはあまり期待できません。

さらに競売による売却では、自己破産の換価よりもリースバックを期待することはできません。

なぜならば競売による売却はいわゆる入札形式であり、最高額での入札者が落札者となります。
また、競売では所有者の意向は一切反映されず、裁判所によってすべてが自動的に進められるため、リースバックや計画性を持った売却をしたい場合は任意売却をする必要があります。

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連帯保証人が自己破産した場合の債務者への影響は?

連帯保証人をお願いしていた人が自己破産をしてしまった場合、債務者にはどのような影響が生じるのでしょうか?

非常に珍しいケースですが、このときの債務者に起こる影響を解説します。

結論:債務者は期限の利益を喪失し、一括弁済請求されるおそれがある。

まず、連帯保証人は自身が連帯保証人であることによって自己破産ができないといったことはありません。
連帯保証人も自身の都合(たとえばカードローンや消費者金融からの借入が返せなくなったなど)で自己破産をすることが可能です。

そして連帯保証人が自己破産をした場合、民法第450条1項で定められている保証人になるための要件「弁済をする資力を有すること」から外れるため、連帯保証人を継続することができなくなります。
※厳密には同条第3項にて定められている「債権者からの指名」がある場合はその限りではありません。

連帯保証人が連帯保証人を続けることができなくなると、ほとんどの債権者は債務者に対し新たな連帯保証人を立てるよう要求します。
債務者がこの要求に応じられず、かつ住宅ローン契約に「連帯保証人の変更時に新たな連帯保証人が立てられない場合は期限の利益を喪失する」旨の条項がある場合は、債務者は期限の利益を主張することができなくなるため、債権者より一括弁済請求をされるおそれがあるのです。

このように債務者、連帯保証人のどちらが先に自己破産をしても共倒れになってしまう可能性があります。
一度、債務者と連帯保証人という関係になったのならば、両者は運命共同体であると考え互いに助け合う気持ちが必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は債務者が自己破産をした場合に、連帯保証人へどのような影響が生じるのかという点を基に、その影響の内容と自己破産そのものを回避する方法を紹介しました。

債務者が自己破産をすると、代わりに債務を負うことになった連帯保証人は、ほとんどの場合で自己破産の必要に迫られることになってしまいます。

連帯保証人への被害を最小限に抑えるためには、債務者自身が任意整理や個人再生、任意売却などの方法で可能な限り債務を圧縮または減額をし、連帯保証人のついている債務を完済する必要があります。

また、不動産のように大きな資産を所有している場合は任意売却が有用だとご紹介しました。
任意売却は連帯保証人への影響を抑えるだけでなく、債務者自身の生活も再建しやすくなるなどメリットが多く存在します。

任意売却ヘルプセンターには任意売却専門の相談員が多数在籍しておりますので、自己破産を検討されている方は、その前に一度私どもにご相談ください。

自己破産で不動産を売却することと、任意売却で不動産を売却し自己破産をすることとでは、自己破産に要する手数料に大きな差が出る場合がありますので、任意売却の経験が豊富な専門家しか提案することのできない、ご相談者さまに適した解決方法をお伝えさせていただきます。

記事の執筆者

長井一記
長井一記 / 任意売却ヘルプセンター センター長

少年期に経験した競売と、不動産業界にて数多くの不動産売買に従事した経験から、少しでも多くの方を競売から救うことのできる「任意売却ヘルプセンター」を設立。
ご相談者さまに寄り添い、任意売却・リースバック・その他の解決手段で競売回避を実現します。

趣味:登山/ジム/地域ボランティア

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