リースバックはいつまで住めるの?売買・賃貸契約の流れと注意点を解説
リースバックは自宅を売却した後も住み続けることのできるサービスですが、いざ利用する際に気になるのが、いつまで住み続けることができるのか?という点です。
リースバックのメリットを理解したうえで、サービスの利用を検討されている方はリースバックの契約の流れ、注意点、いつまで住み続けることができるのかを把握して検討を進めていきましょう。
リースバックとは
リースバックとは、自宅の売却と賃貸契約を同時に行うことで自宅を現金化しながら住み続けることができるサービスのことです。
将来予定している介護老人ホームへの入居資金に充てたいが入居時期が先のため、まだ自宅には住み続けたいといった場合や、急にまとまったお金が必要になったものの子供の学区変更や仕事の都合などで引っ越しをしたくない場合など、住み続けられるメリットを生かしつつ、自宅を現金化することができます。
リースバックの全容を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:リースバックとは?意味や仕組みからメリットまでを完全解説
リースバックの流れ
リースバックによる不動産売却までの流れは、基本的に通常の不動産売却と変わりありません。
違いといえば、自宅売却後に賃貸契約を締結する点が大きく異なる点となります。
具体的にどのような流れでリースバックが進むのかを見ていきましょう。
1.不動産業者を選定する
リースバックに限らず不動産を売却する際は主に2種類の不動産業者から選択することになります。
それは不動産仲介業者と不動産売買業者です。
この2つの不動産業者はどういった点が異なるのでしょうか。
不動産仲介業者とは
不動産仲介業者は不動産を売りたい人(売主)と買いたい人(買主)を探し出しマッチング(仲介)することを事業として行っている会社です。
リースバックの場合はご相談者さまが売主であるため、仲介業者に依頼する場合は買主を探してもらうこととなります。
個人・法人問わず幅広く買主を探すため、複数の買主候補が出てくる場合は競争の原理が働き、売却金額が高くなったりする傾向にあります。
不動産売買業者とは
不動産売買業者は不動産を買い取り(仕入れ)そのあと賃貸物件として貸し出す、リノベーションして販売することを事業として行っている会社です。
そのため常に仕入れ用の資金を確保していることから、売主と合意すればすぐにでも取引ができるスピード感を持っています。
また売買業者に直接買取ってもらう場合は仲介手数料が生じないため、その分不動産の売却にかかる費用を圧縮することもできます。
2.不動産の売却価格を査定してもらう
不動産業者に査定を依頼する際には一般相場に合わせた売却価格とリースバックの売却価格の両方を査定してもらうようにしましょう。
実はリースバックによる不動産の売却は一般相場と異なる価格の付け方をします。
そのため両方の価格を把握することで、このままリースバックを行うか、一般売却へ切り替えるのかを判断がしやすくなります。
リースバックの査定は2段階ある
査定には仮査定と本査定の2つがあり、仮査定は不動産の状況や希望する売却価格、リースバック後の希望家賃などを参考に売却価格を算出します。
その後本査定に進む場合は、建築士や不動産鑑定士が現地調査を行い、仮査定時の差異を確認し本査定による価格を決定します。
3.リースバックの売却価格
リースバックによる売買価格は一般相場の約80~90%になることが多いのですが、その理由はリースバック後の家賃をいくらにするかなどの要素が影響しているためです。
このため
- 毎月支払えそうな家賃の上限
- 住み続けたい期間
の希望は仮査定時にあらかじめ不動産業者に伝えておくようにすることでリースバックの売却価格を詳細に査定することができるようになります。
4.ローン残高を確認する
リースバックを行いたいけれど住宅ローンがまだ完済できていないという方は、自己資金またはリースバックによる売却金額の中から、残りの住宅ローンを完済する必要があります。
ですので、あらかじめローン残高がいくらなのかを正確に把握しておくことをおすすめします。
正確にローン残高を把握することで、住宅ローン完済のために目標売却価格をいくらに設定する必要があるのか分かりますし、売却価格の目標が定まれば不足分をどのように工面するのかなど、検討できる選択肢の幅が広がるようになります。
ローン残高の確認方法
ローン残高の確認方法はいくつかあります。
返済予定表による確認
返済予定表は償還予定表とも呼ばれ、借入総額と現在の借入金額、毎月の支払予定額などが記載されている表です。返済額に占める金利と元本の内訳も掲載されています。
将来のどのタイミングでどれくらいのローン残高になるか、などが一目で把握できるため、不動産売却やリースバックを行う時期などの判断材料にもなります。
残高証明書による確認
残高証明書、正式名称は「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」といいます。
残高証明書は年末時点の住宅ローン残高と当初借り入れた住宅ローンの金額が記載されており、年一回、年末調整や確定申告など住宅ローン控除申請のために発行される証明書です。
年に一回ではありますが、定期的に住宅ローン残高を把握することができます。
借り入れをしている金融機関のWebサイトで確認
ネット銀行やインターネットバンキングを提供している金融機関の場合、事前に登録を行うことでインターネット上から預金残高や住宅ローンの残高などの各種情報を確認することができます。
5.売却活動をする
不動産仲介業者にお願いする場合は、本査定をしたあとから買主を募集することとなります。
売却活動の開始から買主が見つかりリースバックが完了するまでには約2~4ヵ月を要しますので、その間にご相談者さまの方では売却に必要な書類の準備を行うようにしましょう。
また、販売活動の状況報告が週に一度または隔週に一度、仲介業者から共有されます。このタイミングで売出価格の下方修正やその他調整を行い、スムーズに売却されるよう販売活動に協力する必要があります。
なお、不動産売買業者に直接依頼する場合は本査定から最短1週間程度でリースバックが完了するケースもあります。
これは不動産売買業者が普段から不動産を購入するための現金を手元に用意しており、決済のスピードが早くなるためです。
内覧の対応
販売活動中に売主に対応いただくこととして、内覧があります。
不動産売買業者に依頼する場合は査定時に内覧が済んでいれば必要ございませんが、不動産仲介業者に依頼する場合は、購入希望者からの要望があれば内覧を受け入れ、早期に不動産が売却できるよう協力をする必要があります。
売主は、このタイミングで内覧に訪れた購入希望者が買主になることを想定して、相手の人柄や接し方などを注視してみるのもよいでしょう。
リースバック後は買主が大家となるため、信頼できる人かどうか見極めるのは大切なことです。
売買契約と賃貸契約の締結
買主と売却金額についての合意が得られたら、まず売買契約を締結します。
その後、買主から代金を受け取る決済日を調整し同時期に賃貸契約を締結します。
賃貸契約後は毎月家賃を支払うことで住み続けることができます。
リースバックはいつまで住み続けることができる?
自宅を売却しつつ住み続けることができるという点がリースバック最大のメリットですが、実際のところいつまで住み続けることができるのでしょうか?
買主側の視点も交え2つの賃貸契約形態から住み続けられる期間の違いを紹介していきます。
借主有利の普通借家契約
普通借家契約とは、借主が契約を更新し続ける限り住み続けることのできる契約形態です。
一般的に賃貸契約というとこの契約形態であることが多く、主に2年間の契約を更新し続けることで、借主が退去する旨の意思表示しない限り住み続けることができます。
ただし正当な事由があり、かつ6カ月から1年前に借主へ通知していれば、貸主側も契約更新を拒否することができます。
正当な事由の例としては以下があげられます。
- 借主側の家賃滞納等、賃貸契約違反
賃貸契約違反に該当する行為を借主が行うことで、貸主も契約履行の義務が消滅するため、契約更新を拒否することができます。 - 十分な金額の立ち退き料の支払い
個別のケースによって金額は代わりますが、引っ越していただくに必要十分な金額の立ち退き料を支払うことによって契約更新を拒否することができます。 - 貸主側の状況の変化
貸主が賃貸物件を管理できなくなった場合や、物件の劣化が進み居住していただくにはリスクが大きい場合などに契約更新を拒否することができます。
リースバック後も長く住み続けたいと考えている場合は、買主が普通借家契約でのリースバックに応じてくれるかをあらかじめ確認するようにしましょう。
貸主有利の定期借家契約
定期借家契約とは、貸主があらかじめ定めている契約期間内で居住し、契約期間満了時には退去する必要がある契約形態です。
主に2~3年の期間となることが多く、貸主の都合によって定期借家契約となっているケースが多いです。
定期借家契約となる例としては以下があげられます。
- 数年間だけ海外移住するため
- 数年後に区画整理で取り壊す必要があるため
- 数年後に立て直す予定のため
など
リースバックによる不動産売却は、買主が不動産会社か個人投資家になることが多く、その目的は賃貸収入またはリノベーション再販し利益を上げることです。
後者の場合、最終的にはリノベーションすることを前提として買い取っているため、リースバック自体は可能でも定期借家契約となることが多く、借主は数年後には引っ越す必要があるでしょう。
定期借家契約でもずっと住み続けるには
定期借家契約でも再契約を前提とした契約内容にすることで、住み続けられる可能性があります。
当初は契約期間満了後にリノベーションし再販する予定だった買主も、状況の変化や借主が問題なく家賃の支払いなどをしていれば再契約に応じる可能性があります。
買主である不動産会社、個人投資家によって考え方は変わりますので、定期借家契約でも住み続けられる可能性を残すために定期借家契約時には再契約条項を設けるように交渉しましょう。
注意点として、再契約は契約更新とは異なります。
契約更新は前契約の内容をそのまま更新することとなりますが、再契約は基本的に前契約の内容が引き継がれません。
再契約はあくまで契約の再締結となるため、家賃の値上げや賃貸期間が縮まるなど、貸主側からの再契約にあたっての条件変更の交渉が入る場合があります。
絶対に住み続けたいなら買い戻し特約をつけよう
どうしても自宅を手放したくない場合は買戻し特約を売買契約時に設けましょう。
買い戻し期間、買い戻し金額、諸費用の負担割合などをあらかじめ売買契約時に定めることで、その期間は買主が不動産の売却や処分などができないようになります。
厳密には買戻し特約ではなく「再売買の予約」と言いますので、不動産会社の担当者に再売買の予約を希望する旨を伝えてみましょう。
リースバックの注意点
リースバックのように大きな金額が動く取引では実際に行ってみないと気づけなかった注意点がたくさんあります。
これからリースバックを行うかどうか検討している皆さんがリースバックをした後になって後悔することがないよう、リースバックにおける注意点を紹介します。
定期借家再契約時の家賃値上げ
定期借家契約でも普通借家契約のように住み続けることができますが、それには再契約が行えることを売買契約時に定めておく必要があります。
注意点は、再契約時には貸主から家賃の値上げ交渉が入ることが多い点です。
たとえ住み続けられるとしてもこれまでと同じ家賃では住み続けられない場合がありますので、再契約を持ちかける際には家賃が高くなることを想定して備えておくようにしましょう。
買い戻し特約の解消
リースバック時に買い戻し特約を設けられたとしても売買・賃貸契約の不履行があれば買い戻しの権利を消失してしまう恐れがあります。
契約不履行の中でも特に多いのが家賃の滞納によるものです。
リースバックを行う方の中には金銭的に苦しい状況に置かれている方も多く、家賃の滞納が起こりやすい環境にあります。
買戻しを前提としてリースバックをするのであれば、家賃の滞納など契約が不履行にならないように注意しましょう。
想定以上に諸費用が高い
自宅の売却後も住み続けることのできるリースバックですが、引っ越し費用が発生しないだけで想定以上に諸費用がかかります。
- 敷金(家賃1カ月分)
- 礼金(家賃1カ月分)
- 前家賃(家賃1カ月分)
- 火災保険料
- 保証料(家賃0.5カ月分)
- 仲介手数料(仲介業者に依頼した場合、約1カ月分)
- 事務手数料(売買業者に依頼した場合稀に、約1か月分)
ざっとまとめると家賃の約4~5カ月分の費用が必要となります。
またリースバックにおける家賃設定は売却金額の約10%/(年間)となることが多いです。
これは買主が家賃収入による利益などを家賃に折り込んでいるためです。
そのため、売却金額の約4%が初期費用として必要になることを理解しておきましょう。
【3000万円で自宅をリースバックする際の計算式】
3000万円(売却金額)×10%=300万円(年間家賃)
300万÷12=25万(月家賃)
初期費用約5ヵ月×25万=125万(初期費用額)
125万÷3000万=約4.2%
リースバックは総合的に損をする?
損得というのは、何も金銭的な面だけではなく心理的安全など、その基準やバランスは個人によって大きく差が出ます。
しかしリースバックにおいては金銭的な面だけでみると損をする可能性がありますので、利用を検討される前に理解しておきましょう。
家賃には貸主の利益が含まれている
貸主もビジネスでリースバック物件を賃貸に出しているため、借主が支払う家賃には貸主の利益が含まれていることとなります。
このため借りている期間が長くなるほど、所有していたときと比較して実質的な金銭負担が増えていくこととなります。
買戻価格は売却価格の1.3倍になる
買主から自宅を買い戻すには基本的に売却価格の1.1~1.3倍の値段で買い戻すこととなります。
本来、建物は経年と共に劣化していくため資産価値が落ちるのですが、リースバッグによる買い戻しの場合は買主の利益やリースバック実施時に要した諸費用を含んだ買戻価格となるため、売却金額よりも高くなることが多いのです。
買い戻しを前提とする場合は、これらを理解しどのくらいの期間で買い戻すための資金が工面できるかをシミュレーションして無理のない資金計画を立てたうえで買い戻し特約を設けるようにしましょう。
金銭的な面だけを見るとリースバックにはメリットがないように映ったかもしれませんが、思い出の詰まった自宅はお金に換えられない価値を持っています。
リースバックはその自宅に住み続け、買い戻せるチャンスがあるサービスなのです。
ここからはリースバックのメリットとデメリットについて紹介していきます。
リースバックのメリット
自宅を売却後も住み続けることができる
老後資金の確保、急な資金調達、やむにやまれぬ理由によって自宅を手放さなければならないなど、様々な理由によって自宅を売却することになりつつも、仕事や子供のために住環境を変えたくない場合にリースバックを利用することで住み続けることができます。
固定資産税などの維持費が不要になる
自宅を売却すると所有者ではなくなるため、これまで負担していた固定資産税や都市計画税など住宅ローン以外の諸費用の支払い義務が無くなります。
マンションの場合はマンション管理費や修繕積立金などの費用もなくなりますので、住居にかかる月々の費用は少なくなります。
関連記事:【完全網羅】リースバックのメリット10選を徹底解説
リースバックのデメリット
売却金額が市場価格を下回ることが多い
リースバックによる売却は相場の80~90%程度に収まるケースが多いです。
理由として買主側は一定期間を売主に対して賃貸するため、不動産を自由に扱うことができません。
例えば本来であればリノベーションして再度販売し得られたであろう利益を先延ばしされていることになるため、その分を多少売却価格に反映している場合があるのです。
これは買主がどのような意図でリースバックを受け入れ、その後利益を上げようとしているのか次第で変わってきます。
家賃が周辺相場より高くなることがある
リースバックで住み続けられることになった不動産は通常とは異なった基準で家賃が設定されます。
通常は周辺の家賃相場、路線価、㎡数などでおおよその家賃が決まりますが、リースバックの場合は売却金額とのバランスという要素が追加されるのです。
売却金額とのバランスをどのように取るかについては大きく2パターンあります。
- 売却金額が高い代わりに家賃も高い
不動産の売却時、買主への支払金額は高いが、その分家賃を高くすることで買主の利益のバランスを取っているパターン - 売却金額が低い代わりに家賃も低い
不動産の売却時、買主への支払金額は安いが、その分家賃を安くすることで売主の利益のバランスを取っているパターン
売却時にどの程度の金額を手元に残しておきたいのか、住み続ける期間はどれくらいなのかなどを考慮して、どちらのパターンが自身にとって最適であるかを判断する必要があります。
ずっと住み続けられるケースは少ない
リースバックを利用し住み続けられることになったとしても、無期限で住み続けられるというのは非常に稀なケースです。
多くの場合、買主側は定期借家契約による賃貸契約を条件として提示してくることでしょう。
これは買主側が購入した物件をどのように扱いたいのかによって左右されますので、リースバックを利用する際はどれくらいの期間住み続けられるのかを交渉し、どの買主に売却するかの判断を行いましょう。
よくある質問
リースバックには高く売却できる時期などがありますか?
リースバックによる売却は市場価格によって売却金額が決まるのではなく、いくらで売りたいか、リースバック後に支払う家賃はいくらにしたいかなど、売主と買主との間で協議される要素によって決定されます。
そのため市場価格のように変動はないため、高く売却したいなら家賃を高く、家賃を抑えたいなら安く売却、売却と家賃のバランスを調整する必要があります。
仲介業者と売買業者どちらの業者にリースバックを依頼する方がいいですか?
現金化までのスピードを優先するなら売買業者の一択です。
できる限り高い売却金額、安い家賃を優先するなら複数の買主候補が見つかる仲介業者です。
自身で直接、複数の売買業者に査定を依頼することで両者のメリットを享受することもできます。
なお、任意売却ヘルプセンターはリースバックの対応が可能な売買業者と提携しているため、仲介業者と売買業者の両方のメリットをご相談者さまに提供することができる仕組みを整えています。
住宅ローンがまだ完済できていないのですがリースバックできますか?
可能です。滞納されている場合は任意売却と組み合わせることでリースバックを行うことができます。
ご相談者さまの状況に合わせて担当相談員が対応致しますので、リースバックにご興味がある方は、お気軽にお問合せください。
最短ではどれくらいでリースバックできますか?
買主との交渉や諸条件の調整がスムーズにいけば最短1週間程度でリースバックが可能です。
リースバックの売却代金は使用用途に制限がありますか?
リースバックによる現金化は融資ではなく売却益となるため、使用用途の制限はございません。一方で課税対象にはなります。
税金の支払い額がどの程度になるかなども担当相談員が対応させていただきますのでご安心ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
リースバックは一般的な不動産売却の流れとほとんど変わらず、大きく異なるのは
- リースバックを受けてくれる法人または個人を探す必要がある
- 売却契約後に賃貸契約を結ぶ必要がある
の2点のみでした。
一般的な不動産売却は売却したら終わりですが、リースバックでは売却後に家賃の支払いが続いていきます。
ですので、売却した後の資金計画やスケジュールをしっかりと整えたうえで、リースバックを検討することが非常に重要です。
任意売却ヘルプセンターでは、資金計画のアドバイスからリースバックまでを一貫して対応することができますので、ご検討の方はお気軽にご相談ください。