リースバックで不動産を買い戻す方法と失敗しないためのポイント
リースバックでは、一度売却した家を将来的に買い戻すことが可能です。しかし契約内容を確認せずに契約してしまうと、買戻しができなくなるケースもあります。
そこで本記事では、リースバックした家を買い戻す方法やメリット・デメリット、注意点について解説します。リースバックの契約をする時点で必要となる対策もあるので、買戻しを行いたい方はぜひ参考にしてください。
リースバックとは
リースバックとは、自宅を売却する際に買主と賃貸契約を結び、売った自宅を賃貸住宅としてそのまま住み続けられる方法のことです。
「セールアンドリースバック」の略称で、「セール=売る、リース=賃貸、バック=戻ってくる」がセットになっている取引です。本来は買い戻すところまでをリースバックといいますが、昨今では買い戻さないケースも多くなってきました。
リースバックの概要については以下のページで詳しく解説しています。
リースバックのメリット
リースバックは、無金利・無担保でまとまった資金を調達できることがメリットです。
また、自宅を売却しても引っ越す必要がないため、住みなれた家に住み続けることが可能です。家を売ったことが近隣に知られることもなく、住環境が変わらないという利点もあります。
リースバックのメリットについては以下の記事で、さらに詳しく解説しています。
リースバックのデメリット
リースバックで自宅を売るときの売却価格は、市場価格の80~90%程度になります。また、賃貸として借りる際の家賃は周辺相場より高くなりやすい点もデメリットといえるでしょう。
さらに自宅の所有者ではなくなるため、リフォームなどがしにくくなるという側面もあります。
リースバックのデメリットについては以下の記事で、さらに詳しく解説しています。
リースバック後どうやって買い戻すのか?
リースバックでは、売却した自宅を買い戻し、再び所有権を得ることが可能です。その方法には「再売買の予約」と「買戻特約」の2つがあり、どちらもリースバックの売買契約時に設定しておくことで、買戻しが可能となります。
実際には再売買の予約が用いられるケースが多く、買戻特約が使われることは少ないのですが、2つの違いについては把握しておきましょう。
再売買の予約とは?
再売買の予約とは、一度売却した不動産をいずれ買い戻し、再び所有者となることを予約するものです。買い戻す際には売買契約を再度結ぶことになるので、再売買といいます。
再売買の予約では、実際に再売買の契約をする時期や、買い戻す際の売買金額は、双方の合意で自由に設定できます。売買金額はリースバックの契約を締結する時点で定めるか、もしくは再売買の契約をする時点で決めることも可能です。
再売買の予約は、あくまでも予約であるため、必ず買い戻せるという確約はありませんが、その分、買戻しを行う時期や金額に融通が利く点が特徴です。
一定期間内に買戻しすることが確定していない場合でも予約できるため、昨今は買戻特約を付帯するよりも、再売買の予約を設定するケースが多くなっています。
また買戻しの可否について、双方の合意が取りやすいタイミングがリースバックの契約時であるため、将来的に買戻しを想定しているならその際に再売買の予約について確認しておきましょう。
買戻特約とは?
買戻特約とは、あらかじめ設定した金額を買主に返すことによって、自宅を売却したときの売買契約を解除できる特約です。
買戻特約を定める場合は、リースバックで自宅を売る時点で売買契約内に特約として付帯する必要があります。売買契約の締結後に特約を後付けすることはできません。
買い戻すために必要な金額は双方の間で自由に決められますが、自宅の売却金額のほか、契約時にかかった諸費用の金額なども上乗せされることが一般的です。
また、買戻特約で買い戻せる期間は、民法第580条により最長10年までと定められています。10年を超える期間の設定はできず、期間を定めなかった場合には自動的に5年となります。
再売買の予約に比べると自由度が低いため、リースバックで買戻特約を設定するケースはあまり多くありません。
また、一部の悪意ある不動産会社は買戻特約と再売買の予約が混同した説明をし、誤解させたまま買戻特約を設定することで5年を経過してしまったのちに買戻しができなくなっているケースがあります。契約を結ぶ前に、特約などの詳細な部分まで契約書を確認しトラブルに巻き込まれることのないようにしましょう。
リースバックの買戻しで注意すべきこと
リースバックを活用して売却した家を買い戻す際には、特に注意すべきことがあります。
- 買戻しで住宅ローンを組むのは難しい
- 家賃の支払いを滞納すると買い戻せなくなる
- 買戻し期限までに買戻金額を用意できない
これら3つの注意点を知っておくと対策をしやすくなるので、事前に把握しておきましょう。
買戻しで住宅ローンを組むのは難しい
リースバックで売却した家を買い戻すには、あらかじめ設定した買戻金額を用意しなければなりません。しかし、その資金を調達するために住宅ローンを組むことは難しくなっています。
なぜなら、買戻しによる住宅ローンの審査が非常に通りにくいためです。自宅を買い戻すための貸し付けに積極的ではない金融機関もあり、リースバックを利用するに至った経緯などが審査に影響する場合もあります。
また、任意売却とリースバックを併用した場合は信用情報に傷がつき、いわゆるブラックリストに載っている状態となります。リストから消えるまでは、住宅ローンを組むことは難しいと言えるでしょう。
そのため、住宅ローン以外の借り入れや現金一括払いによる買戻しを想定しておきましょう。将来的に買戻しを検討しているならば、そのための資金を計画的に貯めておく必要があります。
ただし任意売却を利用した後、ブラックリストに永久に載り続けるわけではありません。信用情報に掲載された内容は5~7年程度で抹消されるため、審査次第ではありますが、その後にローンを組むことは可能です。
家賃の支払いを滞納すると買い戻せなくなる
リースバックの売買契約時に再売買の予約をしていても、その後の賃貸借で家賃の支払いを滞納した場合、買戻しが行えなくなるケースがあります。
再売買の予約による買戻しができるのは、賃貸契約を滞りなく履行している場合のみと指定されるケースが多いためです。家賃を滞納すると賃貸契約の不履行とみなされ、 再売買の予約が取り消される可能性があります。
この点は法律で定められているものではなく、再売買の予約をする時点で条件を設定することとなります。条件は買主の一存で決めるものではないので、双方が納得のいく内容にしましょう。
また家賃を3か月以上滞納した場合は、賃貸契約自体を解除されて強制退去となる場合もあります。退去すると買戻しはほぼ不可能となるため、家賃を滞納しないように注意が必要です。支払いを忘れないよう、引き落としや自動振込を設定するなどの対策をしておくと良いでしょう。
なお、家賃の金額はリースバックの契約時に設定するため、 長期に渡って無理なく支払える賃料を設定することもポイントです。自宅を高く売却すると家賃も高くなり、売却金額を下げると家賃も安くなる傾向があります。
買戻し期限までに買戻金額を用意できない
買戻しの際に住宅ローンで資金調達をするのは難しいため、資金は現金で用意することが望ましいでしょう。しかし、多額の資金を用意するのは非常に大変です。
買戻特約を設定した場合、買い戻せる期間は最長10年であり、期間を定めていない場合は5年以内となります。その期限までに買い戻すための必要資金を用意できず、買戻しを断念するケースも少なくありません。
期限が定められている場合は、買戻し時期に向けて着実に資金を蓄えておきましょう。また、どうしても買戻しをしたい場合は、買戻価格が低くなるように調整することも大切です。
買戻価格は、リースバックで家を売却したときの価格に、諸経費やリースバック会社の利益を上乗せして算出される傾向があります。そのため、家を売るときの売却価格を低くすることで、買戻価格も低くなるといえます。
買戻しで失敗しないためには
前項では買戻しの注意点をお伝えしましたが、失敗しないための対策としては以下の4つが挙げられます。
- 買い戻せる範囲の買戻価格を設定する
- 買戻し資金は計画的に準備する
- 築年数の経年劣化は買戻価格に反映されない
- リースバックが出来る不動産会社から相見積もりを取る
リースバックの契約前に知ることで対処しやすくなるので、ポイントを押さえておきましょう。
買い戻せる範囲の買戻価格を設定する
買戻しで失敗しないためには、買戻価格を実現可能な金額に設定しておくことが重要です。
リースバックの買戻価格は「売却価格+売買に掛かった諸経費+リースバック会社の利益」によって算出されることが一般的です。このうち、諸経費やリースバック会社の利益は、売主側で削減するのが難しいといえます。
よって、買戻価格を抑えるために重要なポイントは、リースバック時の売却価格を下げることです。売却価格は、買戻価格を決定するうえで、もっとも影響の大きい項目といえるでしょう。
リースバックで売却する際の価格は、双方の合意があれば自由に取り決めできます。また買戻特約を付帯した場合、買戻価格はリースバックの契約時点で確定されます。
再売買の予約においては、リースバック契約時または再売買契約時のどちらでも買戻金額を決めることができますが、あらかじめ設定しておいた方が、買い戻す段階になって想定以上に高額だったという事態を防げるでしょう。
買戻し資金は計画的に準備する
買い戻すための金額を計画的に準備しておくと、失敗を回避できる可能性が高くなります。
資金を準備するための方法として代表的なものは、貯蓄や借り入れです。また、リースバックで自宅を売却した際の売却益を手元に残しておくことも、方法のひとつです。
しかし住宅ローンを組むことは難しいため、借り入れについては使用用途に制限がないフリーローンやカードローンなどが選択肢のひとつとなるでしょう。
これらのローンは住宅ローンよりも金利が高いため、支払う利息も多くなります。またフリーローンなどで借り入れできる上限金額は、一般的な住宅ローンよりも少なくなることが予想されます。
さらにカードローンなどで借り入れる際にも審査があるため、必ず借りられるという保証はありません。そのため、堅実に貯蓄していくのが確実な方法といえます。
買戻金額と時期を想定し、どのくらいのペースでいくら貯める必要があるかをあらかじめ計算しておきましょう。着実に貯めるには、収入の中から貯蓄するべき金額を先に確保し、残りの資金で家計をやりくりするなどの対策が挙げられます。
築年数の経年劣化は買戻価格に反映されない
買戻価格は、基本的にリースバックで売却したときの金額をもとに算出されます。リースバック会社の利益や諸経費なども上乗せされるため、売却時の価格よりも高くなることが一般的です。
たとえ数年が経過し建物が劣化していても、資産価値が下がった分の金額は、買戻価格から減額されません。このため、買い戻す時点では実際の市場価格より高値で買うケースが多くなっています。
こうした事情をあらかじめ把握しておくことによって、実際に買い戻すときのギャップやダメージを軽減できるでしょう。
また買い戻すことに強いこだわりがない場合は、劣化状況などを見たうえで、買戻しを行うか否かを判断するとよいでしょう。再売買の予約であれば、必ずしも買い戻す必要はないため、そのように臨機応変に対応することも可能です。
リースバックが出来る不動産会社から相見積もりを取る
買戻しで失敗しないためには、複数のリースバック会社から相見積もりを取ることも大切です。リースバックサービスを提供する不動産会社は多々あり、サービス内容もさまざまです。たとえば敷金・礼金が不要な会社や、普通借家契約が可能な会社などがあります。
普通借家契約とは、特別な理由がない限り契約更新が可能な賃貸契約の方式です。一般的なリースバックで多く採用される定期借家契約の場合は、一定期間を経過後、再契約できず退去を求められる場合もあります。
退去すると買戻しは難しくなるため、買戻しを想定するなら普通借家契約ができる不動産会社に見積もりを依頼すると良いでしょう。また、買戻価格などもやさしい条件を提示してくれる会社が理想といえます。
複数社から相見積もりを取り、金額だけでなく条件面などを含めて決めると、買戻しで失敗しにくいでしょう。