【完全版】リースバックのデメリットとよくあるトラブル事例
リースバックとは、自宅を売却したあとも賃貸として引き続き住むことができるサービスです。一時的に資金が必要になった方など、最近では住宅ローンの返済や生活資金の調達のためにリースバックを利用する方が多くなっています。
そして、利用者が増えたことによるトラブルを防止するため、2022年6月に国土交通省はリースバックに関するガイドブックを公表しました。リースバックを利用したくても、トラブルになることが不安な方は多いかもしれません。
そこで本記事では、リースバックのデメリットやトラブル事例について解説します。ご自身にとって受け入れられるデメリットかそうでないかを確認することで、万が一に備えられます。不安を解消した上でリースバックを利用したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
要確認!リースバックのデメリット
住み慣れた家を手放さずに資金調達できることが、リースバックのメリットです。しかし、リースバックには売却価格が安いことや、家賃が高くなりやすいといったデメリットがあります。
ここでは、リースバックのデメリットを紹介します。ご自身にとって受け入れられるデメリットかを確認し、内容を押さえておきましょう。
売却価格は市場価格の80~90%程度になる
リースバックの売却価格は市場価格の80〜90%程度になることが多くなっています。
売却価格が安くなる理由のひとつは、買主の利益が制限されるためです。リースバックでは売主が賃貸でそのまま住み続けるため、買主はリフォームして他の人に貸し出したり販売したりすることができません。
このように買主の利益を先延ばしすることとなるため、売却価格は市場価格より安くなることが多いです。ただし買主によって売却(買取)価格は異なるため、複数の会社に見積もりを依頼し、納得できる価格を提示するところと契約しましょう。
家賃が周辺相場より高くなりやすい
一般的な賃料とは異なった基準で算出されるため、家賃が高くなりやすいことが、リースバックのデメリットのひとつです。一般的な賃貸では、周辺の相場や部屋の大きさなどで家賃を決めるケースが多いです。
一方、リースバックの家賃は売却価格によって大きく変動します。売却価格が高いと家賃も高くなり、家賃を安くすれば自宅の売却価格も低くなります。リースバックの売却価格と家賃(賃料)には相関性があります。
またリースバックの家賃は、売却価格の8〜12%程度が目安となります。
売却時に手元に残しておきたい金額や、賃貸で住み続ける期間などを考慮して、ご自身にとって最適な選択をしてください。
自宅の所有者ではなくなってしまう
リースバックでは自宅の売却と共に所有権を買主に渡すため、自分のものではなくなります。所有者でなくなると、大切なマイホームを手放す喪失感にさいなまれるかもしれません。
また、所有者ではなくなるため、配偶者や子どもへ相続できなくなる点もリースバックのデメリットです。
相続するには所有者になる必要があるため、自宅を子どもへ譲りたいといった理由で買戻しをお考えなら、買戻特約を契約書に入れておきましょう。
ずっと住み続けられるケースは少ない
リースバックで家を借りる際は、数年程度の定期借家契約を結ぶ場合が多いです。長く住み続けるのがむずかしい点が、リースバックのデメリットです。定期借家契約では契約期間が終了すれば、退去しなければなりません。
定期借家契約を結ぶ理由には、買主が購入した物件をリフォームやリノベーションをして賃貸に出したり売却したりするなど、自由に使用したい事情があります。賃貸で長く住み続けたいなら、更新可能な普通借家契約か長期間の定期借家契約ができないかを買主と相談すると良いでしょう。
リフォームなどがしにくくなる
所有している自宅ならどんなリフォームも可能ですが、リースバックでは買主の許可なくリフォームや建て替えはできません。
また、一般的な賃貸物件のリフォーム費用は所有者の負担となりますが、リースバックでは借主の希望で建て替えやリフォームをする場合、費用は借主負担となります。しかも、許可が出るのはリフォームや建て替えによって物件の価値が上がる場合のみに限定される可能性があります。
配偶者や親の介護でリフォームが必要になった場合、買主の許可が出なければ賃貸を契約を解除し、引越しを検討しなければならないかもしれません。
リースバックのデメリットとしてリフォームできないことがあるため、申し込む際にはあらかじめ買主に確認しましょう。
巻き込まれ注意!よくあるリースバックのトラブル事例
住宅ローンの返済や生活資金の調達などを目的に、リースバックを利用する方が増加しています。しかし、利用者の理解が不十分な場合、トラブルに発展しかねません。
ここでは、リースバックのよくあるトラブル事例を紹介します。トラブルに遭って後悔しないためにもリースバックを検討している方はぜひ参考にしてください。
家に住み続けられなくなった
リースバックでは、借りられる期間が2年間の定期借家契約を結ぶケースが多いです。2年が経過し買主が再契約に同意しなければ、退去しなければなりません。
定期借家契約の再契約について誤解をしたまま契約を交わしたことにより、自宅に住み続けられなくなるトラブルがリースバックではよくあります。再契約を断るケースは多くありませんが、買主の中には早く退去させて売却を考える方もいるため、注意が必要です。
長く住み続けたいなら、更新可能な普通借家契約を結ぶのがベストな選択と言えるでしょう。
またリースバックの取引実績が多く、話し合いに応じてくれやすい業者を選ぶことも大切です。
他にもリースバック会社が倒産すると、所有者が変更となり再契約が難しくなるケースがあります。トラブルを未然に防ぐにはリースバックの実績が豊富な会社を選び、再契約について事前に確認しておく必要があります。
買戻し金額が想定よりもはるかに高額だった
買戻すタイミングになって想定よりも高い金額を提示され、トラブルになるケースがあります。買戻し金額は、リースバックした売却価格より10〜30%高い傾向があります。売却時より高額になる理由は、リースバックの売買にかかった諸費用や買主の利益を上乗せしているためです。
買戻しについては、リースバック契約をする時点で再売買の予約に関する特約を付けられます。買戻し価格は特約締結時にあらかじめ定めることも可能です。ただし、買戻し価格はリースバックの売却価格同様に市場価格の影響を受けにくいため、買主と売主の合意出来る価格で決まります。
リースバックで自宅を売却するときは、売却価格や家賃だけでなく、買戻し金額も考慮して契約内容を決めるよう注意しましょう。
あとになってリースバックできないと断られた
リースバックを申し込んでも断られてトラブルになるケースがあります。リースバックを断られる代表的な理由に、共有持分とローン返済が完了していないことの2つがあります。
リースバックは自宅を買主に譲り渡すため、所有者全員の同意が必要です。夫婦の共有名義であれば、二人の同意が必要です。所有者の数が多くなるとリースバックに反対する人が出る可能性があります。
そのため、リースバックを検討しているなら所有者数を一人にしておくと良いでしょう。また、自宅の相続を予定している場合、配偶者や子どもに相談しておくと、リースバックしたあとに揉めにくくなります。
住宅ローンの返済が終わっていない場合も、リースバックができない可能性が高くなります。売却価格がローン残高を下回ると、金融機関が抵当権の抹消に応じないためです。ただし、差額分を現金で埋めればリースバックは可能です。
また住宅ローンの残債がある場合でも、任意売却と組み合わせることでリースバックできます。
任意売却とは、債権者である金融機関と交渉して、住宅ローンを完済していない状態でも自宅の売却ができる方法です。
住宅ローンの支払いが滞ると競売になるケースがありますが、競売よりも任意売却の方が売却額が高くなり、金融機関も任意売却を認めることがあります。
リースバックを申し込んでも断られるケースがあることを理解した上で、所有者を一人にすることや任意売却とあわせてリースバックを検討すると良いでしょう。
抵当権と任意売却については、以下のページでさらに詳しく解説しています。
後悔しないリースバックをするには?
リースバックで後悔しないためには、事前の確認が欠かせません。ここでは、リースバックで後悔しない方法を紹介します。トラブルに発展し、後から「リースバックなんてしなければ良かった」と後悔しないために、ひとつずつみていきましょう。
自宅の適正価格を把握する
リースバックの売却価格は家賃や買戻し額と相関関係があり、市場価格とは差があるのが一般的です。自宅の適正価格を知っておくと、リースバックの売却金額に驚くことはないでしょう。目安は、市場価格の80~90%程度です。
自宅の市場価格は、査定サイトで調べたり複数の会社に見積もりを依頼したりして調べることが可能です。市場価格を把握しておくと、売却額を決める際の交渉材料となり、低すぎる金額で契約することを防げます。
リースバックを申し込む前に市場価格を調べ、自宅の適正価格を把握しておきましょう。
信頼できるリースバックの会社を見つける
リースバックで後悔しないためには、頼りになる会社を見つけることが重要です。リースバックは自宅を売却すれば終わりではありません。そのまま住み続けるため、トラブルが起きても早急に対応できる体制や豊富な実績などがある会社に依頼すると安心です。
取引実績を公式サイトで確認し、複数の会社を比較検討してみましょう。また、リースバックでは長い付き合いとなるケースがあるため、希望条件に合う会社を選ぶと後悔しにくいです。
頼りになるリースバック業者を見つけるのがむずかしい場合は、信頼できる不動産仲介会社を探すのもおすすめです。特に任意売却ヘルプセンターのような、任意売却とリースバックの不動産仲介に特化している会社なら、話をスムーズに進めやすくなります。実績と相談員の顔をよく見て信頼にあたいするかを判断しましょう。
無理なく支払える家賃になるよう売却額を調整する
家賃は売却価格の8〜12%程度が一般的で、売却価格が高くなれば家賃も高くなり、売却額が安くなれば賃料も安くなります。リースバックの家賃を決める際には継続して払える賃料か事前に計算しておくことが重要です。
また、経済状況が変化すれば家賃が上がるかもしれません。長く住み続けるなら10年程度支払える家賃であるかを確認しましょう。リースバックした後の入居期間や家計を想定し、売却価格や家賃を決めることが大切です。
賃貸契約期間と契約種別について確認する
契約種別には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2つがあります。この2つの契約では借主の立場が大きく異なるため、リースバックで失敗しないためにしっかり確認しておきましょう。
普通借家契約
普通借家契約とは一般的な賃貸借契約で、借主に有利な契約です。2年間の契約期間を設定することが多く、借主が希望すれば更新できます。賃料の滞納や建て替えなど特段の理由がない限り、貸主から一方的な解約はできません。
家賃の値上げにも正当な理由が必要なため、リースバックする際は普通借家契約を結ぶことを推奨します。
定期借家契約
定期借家契約とは、あらかじめ期間を定めた契約で、借主に不利な契約です。しかし、多くのリースバックでは定期借家契約を結ぶ傾向が見られます。
定期借家契約では原則更新がなく、正当な理由がなくても契約期間が終われば自宅から退去しなければなりません。再契約ができれば期間終了後も住み続けられますが、普通借家契約の更新とは異なり、再契約に同意するかは貸主次第です。
このように普通借家契約か定期借家契約かによって、住み続けられる期間が大きく変わります。長く住み続けたいなら、普通借家契約に応じてくれるリースバック業者を選びましょう。
買戻しの条件を契約書に必ず明記する
将来的に買戻しをお考えなら、リースバックの契約書に買戻特約が明記されているか確認しておくと、後悔しにくいです。買主が口頭で説明しても契約書に記載がなければ、買戻しできない場合があります。
また買戻し額が契約書に記載されていないと高額請求され、トラブルに発展する可能性があります。買戻しを想定している際は、契約書に買戻し額や条件が明記されているか必ず確認しましょう。
買戻しについては、以下のページでさらに詳しく解説しています。
契約書の最終確認を徹底する
リースバックを活用する際は、口頭のみの説明で同意して後悔しないよう、契約書を確認することが欠かせません。
ここまで説明してきた以下の項目について、漏れなく記載されているか、自身の認識と合っているかをチェックしてみてください。
- 売却価格
- 賃貸価格
- 買戻価格
- 契約期間
- 契約種別
- 買戻特約
不動産仲介業者を利用する場合、担当者にも確認を徹底するよう伝えたうえで、ご自身に不利な内容になっていないか確認しましょう。
分からないことを放置せず買取業者へ確認し、ご自身が納得したうえでリースバックを利用すると、後悔しにくいです。
リースバックのデメリットまとめ
いかがでしたでしょうか。本記事ではリースバックのデメリットとトラブル事例をご紹介しました。
リースバックは自宅に住み続けられるうえに資金調達ができるとても便利な手段ではありますが、大きな金額が動く取引でもあるためデメリットやトラブルも規模や影響が大きくなります。
事前にデメリットとトラブル事例を把握しておくことで、万が一遭遇した場合でも適切な対処が取れるようになり、リースバックを利用したことによる後悔も起こりにくくなるでしょう。
より具体的にリースバックの利用を検討される場合は、任意売却ヘルプセンターへお気軽にご相談ください。ご相談者さまの状況に合わせたデメリットやトラブル事例を紹介しつつ適切なリースバックの成立をサポートさせていただきます。