離婚時に発生する住宅ローン問題とは?ケース別の問題点と解決方法を解説!

離婚時には慰謝料や養育費、財産分与など夫婦間で話し合うべきことがたくさんありますが、その中でも特に問題となりやすいのが住宅ローンの残った家をどうするかについてです。
大半の場合、住宅ローンの残った家が最大の債務となりえます。支払いに関する問題や、住み続けるのが誰かによって生じる問題など、状況と組み合わせによって影響を受ける人も変わります。

このように、住宅ローンの残った家がどのような問題を引き起こすのか、またそうならないための解決方法はなにか、ケース別に解説していきます。

離婚する前に確認すべき4つのポイント

離婚する前に確認すべき4つのポイント

住宅ローンの残った家が引き起こす問題は次の4つのポイントを確認することで、おおまかに絞り込むことができます。 引き起こされる問題が事前に分かれば、対策を取ることもできますので、各ポイントを見て、自身が該当するかを確認しましょう。

■4つのポイント

  1. 家の名義人(所有者)を確認する
  2. 住宅ローンの名義人(債務者)を確認する
  3. 住宅ローンの組み方を確認する
  4. 離婚後に住み続けるのが誰かを確認する

家の名義人(所有者)を確認する

不動産登記簿の甲区で名義人(所有者)が誰になっているのかを確認します。
不動産の登記簿は誰でもインターネットからオンラインで取得することが可能です。
一般的に家の名義人と住宅ローンの名義人は一緒になっていることが多いですが、一緒ではない場合、さまざまな問題に繋がるケースがあります。

住宅ローンの名義人(債務者)を確認する

住宅ローンを組んで家を購入した場合、不動産登記簿の乙区に金融機関名と借入金額、債務を負っている人の名前の記載があります。
登記簿に名前の記載がある人は、金融機関への返済義務がある人になります。
住宅ローンによる記載の他に、自宅を担保にお金を借り入れていたりすると消費者金融の名前も出てくる場合があります。 出てくる金融機関の数が多いほど、不動産の売却や離婚後の家の扱いのハードルが上がるので注意が必要です。

住宅ローンの組み方を確認する

住宅ローンの組み方も確認ポイントの一つです。どのような組み方になっているか次第で離婚後の家の扱い方にも変化がでます。
住宅ローンの契約内容を振り返り、どのような組み方になっているのかを確認しましょう。

単独ローンの場合

単独名義で住宅ローンを組んでおり、離婚後も本人がそのまま住み続けるケースは特に問題はありません。
しかし、離婚後に本人が家を出ていき、元配偶者が住み続ける場合は注意が必要です。

居住者が誰なのかは金融機関には関係がなく、住宅ローンの支払い義務は変わらず本人に残り続けます。
万が一、本人が住宅ローンの支払いを滞納してしまうと、いずれ競売にかけられてしまいます。何も知らずに住んでいる元配偶者にとっては、いきなり家を失ってしまうというトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。

ペアローンの場合

ペアローンは主に夫婦二人の名義で住宅ローンを組む方法です。
各々が主債務者となり、またお互いが相手の連帯保証人となります。それぞれがローンの審査と融資を受けるため単独ローンと比べて借入総額が多くなる点がメリットです。

ですが離婚した後のことまで考えを広げると、デメリットもあります。それは家を出て行った一方にも住宅ローンの返済義務が残り続ける点です。
返済義務は住宅ローンを完済するまで消えることがありません。また、仮に一方が自己破産などをした場合、連帯保証人である片方にすべての債務の返済義務が生じるため、連鎖的に自己破産するリスクも隠れています。

収入合算(連帯債務)の場合

単独ローンでは希望の借入金額に届かない場合、連帯債務者をつけ収入合算することで、借入金額を多くすることができます。
連帯債務者は主債務者同様に債務の返済義務を負うため、住宅ローンの完済または連帯債務者の変更(金融機関が応じてくれる場合に限る)などの方法でしか連帯債務から外れることはできません。
離婚した後のことまでを考えると、ペアローンと同様のリスクとデメリットがあります。

収入合算(連帯保証)の場合

単独ローンでは希望の借入金額に届かない場合、連帯保証人をつけ収入合算することで、借入金額を多くすることができます。 連帯保証人は主債務者の返済が滞ったりしない限り、返済義務が生じることはありません。
しかし、主債務者が住宅ローンの滞納をしたり、自己破産などした場合は、連帯保証人が代わりに支払う義務を負うこととなります。
ペアローン、連帯債務と多少の違いはありますが、結果的には同様のリスクとデメリットがあります。

離婚後に住み続けるのが誰かを確認する

家の名義、住宅ローンの名義、住宅ローンの組み方に加えて、離婚後に誰が住み続けるのかという点も重要な確認ポイントです。
住み続けるのが誰かによって生じる問題とその解決方法が変わってきます。ケース毎に詳しくみていきましょう。

組み合わせによって変化する住宅ローン問題

住宅ローンの残った家が離婚後に問題となるケースは、家の名義、住宅ローンの名義(と組み方)、誰が住み続けるのかの組み合わせでいくつかのケースに分かれます。
ケース毎にどのような問題が起こるのか、またその解決方法が異なるため、一つずつ紹介します。

ケース自 宅住宅ローン住み続ける人問 題
元夫元夫元夫なし
元夫元夫元妻あり
元夫両方元夫あり
元夫両方元妻あり
元夫元妻元妻あり

ケース①所有者、住宅ローン名義、居住者が同一の場合

自宅の所有者と住宅ローン名義、住み続ける人が同じときは、元配偶者の影響で住み続けられなくなったり、住宅ローンの一括返済をする必要に迫られたりすることはありません。

ケース②居住者だけが異なる場合

家と住宅ローンの名義は元夫、離婚後も住み続けるのは元妻のケースを例によく起こる問題をみていきましょう。

まず元夫は家を出て行ったのち、自身が居住する家の家賃と所有する家の住宅ローンの支払いが続いていくことになります。
家賃、住宅ローンと固定支出の割合が大きいため、ちょっとしたことで収支のバランスを維持できなくなり、自身への影響がもっとも少ない住宅ローンの支払いから滞り始めます。

元妻は、離婚協議の際に家を譲り受けているため、元夫に対して家賃の支払いなどはせず住み続けています。
しかし、元夫の住宅ローン滞納により気が付けば住んでいる家が競売にかけられ、数カ月の内に家を追い出される事態となります。その影響は引越しに留まらず、転職など生活基盤を大きく変えざるをえない状況になります。
子供がいる場合は転校も大きな環境の変化となるでしょう。

このように居住者だけが異なるケースでは、住宅ローンが残っているときに注意が必要です。
仮に元妻が元夫に対し家賃を支払っていたとしても、元夫が浪費などで住宅ローンの支払いを滞納してしまっては同じ結末を迎えることとなります。

住み続けることを前提に問題を根本的に解決するには、住宅ローンを完済するか、住宅ローンの借り換えで家と住宅ローンの名義を元妻にするしかありません。

元妻が住み続けないという選択ができる場合は、元夫の方が住み続けるか、自宅を売却し住宅ローンそのものを完済する方法が考えられます。
この際、自宅の売却金額が住宅ローンの完済に満たない場合は任意売却を検討する必要があります。

任意売却の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

関連記事:任意売却とは?競売を回避できる最終手段
関連記事:任意売却のメリット10選!任意売却を選ぶべき理由がすべて分かる
関連記事:住宅ローン滞納後の流れを解説|12カ月後には競売の危機が!

なお、所有者と居住者が一緒で住宅ローンの名義だけが異なる場合も、同様の問題と解決方法になります。
つまり、「住宅ローンの名義」と「居住者」が一致しない場合に起こり得る問題ということです。

ケース③家の所有者と居住者が同一で住宅ローンの名義が両方の場合

住宅ローンの名義が元夫と元妻(ペアローンや収入合算)、家の名義は元夫で居住者も元夫のケースを例によく起こる問題を解説します。

このケースでは元妻が自宅を出ていき、元夫が住み続けています。そのため、ケース②と比べると元夫の固定支出は離婚前と変わらない場合が多いですから、元夫が住宅ローンの滞納をしてしまう可能性は低いと言えます。(もともと元夫の収入のみで住宅ローンを返済している場合)

しかし、元夫が住宅ローンを滞納すると元妻へ影響が出始めます。
ペアローン、収入合算(連帯債務・連帯保証)のどの形であっても、元妻へ住宅ローン返済の督促がくるようになります。元妻も返済に応じられない場合は競売へと発展していきます。

最終的に競売によって自宅が売却されたあとも、売却金額が住宅ローンの完済に届かない場合は、元夫と元妻には残債務の支払い義務が残ります。

解決方法としては、自身が住宅ローンの名義から外れることが必要です。
ほかにも住宅ローンそのものを完済するか、元夫に単独ローンに借り換えてもらう、別の連帯保証人・連帯債務者と交代するという方法が上げられます。
ただし、ローンの借り換えや連帯保証人・連帯債務者の変更は金融機関の合意が前提となりますので、離婚前に確認しておくことが肝心です。

ケース④住宅ローンの名義が両方で所有者と住み続ける人が異なる場合

ケース③と同様、ペアローン、収入合算(連帯債務・連帯保証)による問題の他に、このケースでは住み続けている元妻が住居を失ってしまうリスクをかかえている状況になります。
そのため、住宅ローンの滞納による競売手続きが進行していくと元妻は住む場所を失ってしまううえに、不動産売却代金で住宅ローンの完済ができない場合は、残った債務の一括返済を債権者である金融機関などから要求されることになります。

ケース⑤所有者のみが異なる場合

所有者が元夫、住宅ローンの名義と住み続ける人が元妻の場合、住宅ローンが残っている間は元妻が住宅ローンの支払いを滞納しない限り、自宅を失う可能性は低いです。

一方、住宅ローンの完済後は所有者である元夫の意思次第で、自宅を売却されてしまう可能性があります。

また元夫は所有者であるため、固定資産税などの税金と管理費、修繕積立金(マンションの場合)の支払い義務があります。
これらの滞納が積み重なっていくと、住宅ローンの滞納時とは異なり、行政やマンション管理組合から競売の申し立てをされてしまうこともあるため、離婚の際に所有者の名義変更をし、ケース①の状態になるようにしておくことが望ましいです。

解決方法まとめ

前の章でケース別に起こる問題とその解決方法を紹介してきました。
次に解決方法別に詳細と注意点を紹介していきます。理想的な解決方法から具体的に取り組める解決方法まで紹介していきます。

解決方法①自分がそのまま住み続ける

家と住宅ローンの名義が自分(単独ローン)で、居住者も自分である場合が、もっとも問題のない状態です。
どちらか片方の影響で自分が住む場所を失う可能性もないため、安心した生活を送ることができます。

解決方法②住宅ローンの借り換えをする

ペアローン、収入合算(連帯債務・連帯保証)から外れるためや、住宅ローンの名義人と居住者を一致させるためには住宅ローンの単独ローンへの借り換えが必要です。
住宅ローン借り換えには審査があります。審査項目はいくつもありますが、一番見られるポイントは新たな住宅ローン名義人に返済する資力があるかどうかです。

例えば、専業主婦が離婚した場合では住宅ローンの借り換えをすることは難しいでしょう。 安定した収入元がないため、住宅ローンの審査が非常に厳しくなります。

解決方法③連帯保証人・連帯債務者を交代する

連帯保証人や連帯債務者の交代をするには金融機関の合意が必要になりますが、認められる可能性はかなり低いのが実情です。

住宅ローンを組んだ当時、主債務者と連帯保証人(または連帯債務者)の収入や預金残高などを総合的に判断したうえで、連帯保証人・連帯債務者は決められています。
そのため交代するためには、自身と同じ程度の属性や収入、資産を持ち、交代することに同意してもらえる人物を用意したうえで、金融機関に交渉する必要があります。

解決方法④自宅を売却して現金にする

住み続ける人がいない、またはその必要がない場合は不動産を売却して現金化することで、離婚後トラブルの元となる家自体を手放すことができます。
しかし、現金化の際に注意しなければならないポイントが2つあります。それは住宅ローンの残債と不動産売却価格です。このバランスによって、アンダーローンとオーバーローンのどちらに該当するか分かれます。

アンダーローン

住宅ローンの残債<不動産売却価格 の状態をアンダーローンといいます。
アンダーローンは、自宅の売却価格よりも住宅ローンの残債が少ない状態です。
つまり、不動産売却代金の中から住宅ローンの残りを完済し、手元に多少のお金が残る状態をいいます。
この場合は、一般的な不動産売買となるため特段の問題はありません。 問題があるのはオーバーローンの場合です。

オーバーローン

住宅ローンの残債>不動産売却価格 の状態をオーバーローンといいます。
オーバーローンは、自宅の売却価格よりも住宅ローンの残債が多い状態です。
この状態では、住宅ローンを組んだ金融機関が、不動産に設定している抵当権を取り消さないため、実質的に不動産を売却することができなくなります。売りたくても売れない状態です。
売却するためには金融機関との交渉が必要になるため、一般的な不動産売却ではなく任意売却という売却方法を選択することになります。

任意売却について、詳しくはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。

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まとめ

まとめ

今回は離婚時に起こりやすい住宅ローン問題について、ケース別に異なる問題点と解決方法を解説しました。

自宅の所有者は誰で、住宅ローンは誰が組むことにするのか、離婚後に誰が住み続けるのか、この組み合わせが変わることで、問題の内容やリスク、解決方法が異なることが分かったことと思います。
いずれのケースでも早期にご相談いただくことで、精神的、金銭的にも余裕を持った解決をはかることができます。

住宅ローン等の滞納による問題の場合は、時間の経過と共に遅延損害金が増加したり、生活を立て直すための時間が足りなかったりするため、緊急性が高くなります。
任意売却ヘルプセンターでは、このように離婚をきっかけにした住宅ローンや不動産の問題解決を中心に、債権者との交渉や不動産売却後の生活再建をサポートしています。
他にも弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーと業務提携をしていますから、あらゆる専門的な問題でも解決へ導くことができます。

離婚時の住宅ローン問題でお困りの場合はお気軽に任意売却ヘルプセンターまでご相談ください。

記事の執筆者

長井一記
長井一記 / 任意売却ヘルプセンター センター長

少年期に経験した競売と、不動産業界にて数多くの不動産売買に従事した経験から、少しでも多くの方を競売から救うことのできる「任意売却ヘルプセンター」を設立。
ご相談者さまに寄り添い、任意売却・リースバック・その他の解決手段で競売回避を実現します。

趣味:登山/ジム/地域ボランティア

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