任意売却のデメリット5選を解説!結論:競売よりは任意売却を
住宅ローンを組んで自宅を購入した場合、毎月決められた金額を返済していく必要があります。しかし、ライフスタイルの変化により、金銭的に困窮し、住宅ローンの支払いを滞納してしまう可能性もあります。
このように住宅ローンの支払いが困難になった場合の選択肢の一つとして、任意売却という方法が存在します。
任意売却には多くのメリットがありますが、利用する際のデメリットや注意点もあります。
任意売却をスムーズにおこなうには正しい知識を得たうえで、利用を検討する必要があります。
本記事では、任意売却をおこなう際に知っておくべき基礎知識や任意売却を利用する際のデメリット、流れについて解説します。
任意売却ってどんな方法?
本章では、下記の任意売却の基礎知識を紹介していきます。
- 任意売却とは
- 任意売却と競売との違い
- 任意売却ができる条件
任意売却とは
任意売却とは、住宅ローンなどの返済ができなくなり、競売によって不動産を強制的に売却されてしまいそうなときに、市場価格で不動産を売却する方法のことです。売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産は金融機関からの合意を得られないと売却することができません。
不動産を売却し残ってしまったローンは金融機関と相談のうえ、無理のない範囲で金融機関へ返済していきます。実質、無担保ローンとして分割払いで返済していくことになります。
関連記事:任意売却とは?競売を避けて不動産を売却する方法をご紹介
任意売却と競売の違い
任意売却とよく比較される売却方法として競売があります。ここでは、任意売却と競売の違いを項目ごとに解説します。
任意売却は競売と違い強制退去ではなく引越しに猶予がある
任意売却と競売の違いの1つは、任意売却は強制退去ではなく引越しに猶予期間があることです。任意売却では、買主との話し合い により退去日を決定するため、引越しに猶予期間があります。
一方、競売では落札者との話し合いがなく、裁判所から通知された退去日には退去しなければなりません。
引越し費用を一部支払ってもらえる場合がある
任意売却は競売と違い、引越し費用の一部を金融機関が費用として認めてくれることがあります。なぜなら任意売却をすると競売よりも高く売却できる=残債をより多く回収できる可能性があると金融機関も理解しているためです。
そのため金融機関は引越し費用を支払うことになったとしても 、任意売却を認めることがあるのです。
しかし、引越し費用は必ず出してもらえる費用ではなく、交渉当初から金融機関と引越し費用を捻出するための交渉をしておかなければなりません。交渉次第で引越し費用が支払われるのか決まってくるため、任意売却について専門的な知識のある人が金融機関と交渉していかないと引越し費用を認めてもらえる可能性が下がってしまいます。
また、引越し費用は最大30万円しか支払われません。そして引越し費用は実費清算のため、30万円以下で引越しをしてもかかった費用分しか認められないので、注意しておきましょう。
近隣にお金がないことを知られる可能性が低い
任意売却は競売と違い、お金に困って不動産売却するということが近隣に知られにくいメリットがあります。
競売の場合は、競売手続きをする過程で必ず公告をされます。公告とは、国や自治体が特定の事項を、広く一般に告知することをいいます。
また、競売になると裁判所が運営する「BIT 不動産競売物件情報サイト」に不動産情報が掲載されます。このサイトは誰でも自由に閲覧することができ、サイト内に不動産の住所(マンションの場合は部屋番号まで掲載)が載ってしまいます。このため公告やBITを見ることにより近隣の人に知られてしまうことがあります。
しかし、任意売却は競売のような公告や不動産売却サイトにわざわざ任意売却物件とは載せないため、近隣の人に知られる可能性は低いです。ただし、任意売却を依頼した任意売却事業会社によっては、任意売却物件であることが分かるようサイトに載せるケースもあるため、あらかじめ依頼する任意売却事業会社に任意売却物件と掲載するのか確認しておく必要があります。
任意売却は誰でも利用できるわけではない
金融機関は住宅ローンの滞納に備え、万が一住宅ローンが滞納し支払いが遅延したとき融資金額の回収をしてもらえるよう保証会社と保証契約を締結しています。そのため金融機関としては、住宅ローンの滞納をされたとしても大きな損失がないため任意売却にはすぐに応じてくれません。
任意売却は、住宅ローンを滞納し債権の回収できる権利が金融機関から保証会社やサービサー(債権回収会社)に移る段階になってから初めて利用することができるようになります。 ご相談者様側では保証会社やサービサーが送付する「代位弁済通知書」が届くことで、任意売却が出来るタイミングになったことが確認できます。
ただし、事前に金融機関に任意売却の相談はできるため、住宅ローンの返済に困った場合は早めに任意売却事業会社に相談をしたうえで、金融機関と話し合う場を設けましょう。
任意売却ができる条件
任意売却ができる条件は、次のとおりです。
- 銀行など(債権者)と任意売却することについての合意を得る
- 任意売却をする不動産に市場価値がある
- 共有者(連帯債務者)の同意を得る
- 任意売却するのがマンションの場合、一定以上の管理費・修繕積立金の滞納がない
上記の条件に当てはまらない項目がある場合、任意売却ができないケースが多いです。
任意売却のメリット
任意売却をすることには多くのメリットがあります。下記の項目をそれぞれ解説します。
- 売却後にも自宅に住み続けられる可能性がある
- 引越しの費用を一部受け取ることができる
競売より高く売却できる可能性がある
売却後も自宅に住み続けられる可能性がある
任意売却ではリースバックを利用することができる場合があり、そのまま自宅に住み続けられる可能性があります。
リースバックとは自宅を売却して現金化し、売却後も住み続けることができるサービスです。住んでいる住宅を売却し、売却後は買主と賃貸契約を結ぶことで、元の住まいに住み続けることができる仕組みです。
ただし、任意売却でリースバックを利用する際は、金融機関が嫌がるケースが多いため、事前に金融機関に伝えておく必要があります。
なぜなら、リースバックでの売却は通常の不動産相場よりも安くなることが一般的で、安く売るなら競売のほうが良いと金融機関が判断する可能性があるためです。 早めに任意売却事業会社にリースバックを利用したい旨を伝え、金融機関にもその旨を伝えてもらいましょう。
引越しの費用を一部受け取ることができる
競売の場合は引越し費用がまったくもらえませんが、任意売却の場合は最大30万円まで引越し代金が出ることがあります。引越し費用をもらうためには、債権者との事前の話し合いでの取り決めが重要となります。
競売より高く売却できる可能性がある
競売の売却価格は不動産売却相場の6割〜8割になるといわれていますが、任意売却は相場に近い金額で売却できることがあります。
任意売却は競売と違い、建物の内覧や土地に立ち入ることができるため、不動産購入者が事前に建物の不具合などをよく確認することができます。
そのため、不動産購入者が通常の不動産取引に似た内容で購入を進められることから、任意売却では相場に近い金額で売却が可能になります。
不動産が高く売却できれば残債が圧縮できるため、売却後の残債分割支払いの負担が軽くなります。
任意売却を行うときのデメリット5選
任意売却にはさまざまなメリットがありますが、利用することによるデメリットもあります。ここからは任意売却を行うときのデメリット5選をご紹介します。
- 任意売却後にブラックリストに掲載されてしまう可能性が高い
- 販売活動に協力しなければならない
- 連帯債務者からの同意を得なければならない
- 任意売却が出来なかった場合は競売になる可能性が高い
- 任意売却を依頼する会社を探すのが大変
任意売却後にブラックリストに掲載されてしまう可能性が高い
住宅ローンを一定期間滞納してしまうと、個人情報信用機関にローン滞納の情報が掲載されます。これはいわゆるブラックリストに登録された状態です。個人信用情報機関に情報が掲載されてしまうと、約5年~10年間はクレジットカードの作成や新規のローン借り入れができません。
個人信用情報機関とは、CICやJICC、KSCなどの会社のことを言い、割賦販売法および貸金業法の両業法に基づき金融事故 情報などを管理しています。各会社により違いはあるものの滞納したという情報は個人信用情報に5年~10年程度掲載されます。
なお、競売になった場合は必ずブラックリストに登録されますが、任意売却の場合は話し合いの内容や販売活動期間によりブラックリストに登録されないこともあります。
個人信用情報は、個人信用情報機関へ自ら問い合わせることにより確認することができます。
・インターネット上から取得する
・直接個人信用情報機関へ行き、取得する
・郵送で取得する
などの方法を取ることができます。
現在のコロナ禍では、窓口での受け付けを停止しているところがほとんどですので、インターネットや郵送で個人信用情報を取得する方法をおすすめします。
販売活動に協力する必要がある
任意売却は通常の不動産売却と同じく不動産購入希望者が現れた場合、建物の内覧立ち合いなどに応じる必要があります。内覧は一度で終わることは少なく、何度か立ち会う必要があります。
また、不動産購入希望者のために室内を清掃するなど清潔に保っておく必要もあります。室内の状況は不動産売却速度や金額に影響することがあるため、任意売却後の残債の支払いを少なくするためにも日頃から清掃や整理整頓は必ず行うようにしましょう。
連帯債務者からの同意が必要
任意売却をする不動産に共有名義人(連帯債務者)がいる場合は、必ず売却の同意を得なければなりません。共有名義人がいる不動産を共有物と呼びますが、民法により共有物の売却をする場合は、共有名義人の同意がなければ売却を行えないという定めがあるからです。
不動産を夫婦共有名義で購入しその不動産の任意売却を行う際、例え離婚して共有者が行方不明だとしても探し出して同意を得なければ、不動産自体売却することができません。
共有名義人が行方不明で探偵に依頼する、失踪宣告をする場合は、早めに任意売却事業会社へ相談を行うようにしましょう。
任意売却ができなかった場合は競売になる可能性が高い
債権者は任意売却の手続きと同時に競売の手続きも開始している場合があり、任意売却に時間がかかると競売になる可能性が高くなるので注意しましょう。
任意売却を依頼する会社を探すのが大変
任意売却をスムーズに行えるかは、金融機関との交渉の経過次第です。そのため信頼が置ける会社に依頼をしないと任意売却が上手く行えず、売却後の残額分返済が増えてしまうことも起きかねません。最悪の場合、任意売却自体が認められないということもありえます。
任意売却をスムーズに行うためには任意売却が得意な会社に依頼することが、最も重要です。依頼検討をしている会社が本当に信頼できるのかその会社のホームページを確認したり、口コミを確認するなど慎重に検討しなければなりません。
任意売却で失敗しないための3つのポイント
任意売却で失敗しないためには、3つのポイントを押さえておく必要があります。
- 任意売却の相談先を早めに見つけておく
- 任意売却をしたいからといって勝手に滞納を開始しないこと
- 室内はキレイに保っておく
これらの項目をそれぞれ解説します。
任意売却の相談先を早めに見つけておく
任意売却は滞納を始める前に行うことはできませんが、金融機関への事前相談が可能です。金融機関に相談するときには具体的な話をしなければならないため、任意売却が得意な会社に同席してもらったほうがスムーズに交渉を行うことができます。そのため任意売却の代行依頼をする会社をあらかじめ見つけておかなければなりません。
特にリースバックを利用する場合や連帯債務者が行方不明の場合は話し合いにより解決しなければならないことがあり、任意売却を開始するまでに時間がかかると予測されますので、より早く任意売却の相談をする必要があります。
任意売却をしたいからといって勝手に滞納しないこと
任意売却を早めにしたいからといって勝手に月々の返済を停止してしまうと、競売手続きを進められる可能性が高まるので注意しましょう。
また、滞納した場合は金融機関から来る通知を無視することは絶対にしないようにしましょう。なぜなら、通知を無視してしまうと任意売却の相談をする前に競売手続きを開始されてしまう恐れがあるからです。
他にも注意点として、任意売却は競売開札と呼ばれる競売物件の落札者が決定する日の前日までしか行なえないため、相談が遅れると任意売却のスケジュールを圧迫していまいます。
債権者との話し合いが終わったときには競売開札の日が迫っていた、というような事態にならないようにしましょう。
室内は清潔に保っておく
住宅ローンの返済が厳しいなどの理由があると、室内をキレイに保っておく余裕がないかもしれません。しかし、不動産購入検討者が住宅を見に来たときに室内が片付いていると購入意欲が高まり、早期高値売却につながることがあります。これにより不動産売却後の残債を少しでも減らし、残債分割返済を減らすことにつながるため室内は清潔に保っておく必要があります。
任意売却を行うときの流れ
ここからは任意売却を行うときの流れを、ご紹介します。
- 任意売却を依頼する会社を選定
- 債権者や自治体との話し合い
- 不動産売却活動開始
- 不動産売買契約を締結
- 債権者との配当配分調整
- 不動産引き渡し
- 借入残額分の返済開始
以下でそれぞれの項目を解説します。
任意売却を依頼する会社を選定
個人で任意売却を進めるのは難しく、まず任意売却事業会社を選定する必要があります。依頼する任意売却事業会社には、任意売却の実績があるか確認することが重要です。
債権者や自治体との話し合い
抵当権者や差押者と話し合い、配当金や無剰余の取り扱いなどを取り決めます。この話し合いが任意売却において重要で今後の行方を左右します。抵当権者や差押者との話し合いは個人で行うのが困難なため、任意売却事業会社が代わりに行います。
不動産売却活動開始
引き続き債権者と話し合いつつ、債権者より任意売却の内諾を得た後に不動産の売却活動を開始します。債権者との話し合いは時間がかかるため、不動産売却と同時並行して進めていきます。
不動産売買契約を締結
不動産購入検討者が建物の内覧をし、購入の意思を示したら不動産売買契約を締結します。
不動産売買契約を締結するときには、不動産売買契約の特約として債権者との話し合いがまとまらなかった場合には、白紙解約できるという文言を入れます。そのため不動産売買が決まったとしても、債権者からの正式な売却許可が取れるのは売買契約締結後になり、可能性は低いものの債権者から売却許可を得られないことがあります。
債権者との配当配分調整
売買契約に基づき配当の確定承諾を債権者から取ります。ここで債権者からの同意が得られれば、不動産の引き渡しに進むことができます。
不動産引き渡し
売主と買主が同意した日付までに退去し、不動産の引き渡しを行ないます。
借入残額分の返済開始
任意売却後の残債は金融機関との話し合いによって何年かに分けて支払います。この残額分のローン返済が完了したら任意売却は終了です。
任意売却でよくある質問
ここからは任意売却についてよくある質問に回答していきます。
任意売却後はクレジットカードなど作れないの?
任意売却後、個人信用情報に滞納の情報が掲載される確率は高いため、個人信用情報機関の履歴が消えるまでの約5年前後はクレジットカードの作成は難しいと思ったほうが良いでしょう。
個人信用情報機関に情報が登録されるというのは、いわゆるブラックリストに掲載されてしまうということです。貸金業法などにより個人信用情報機関は定められた期間、金融事故情報を登録しなければなりません。自身の現在の登録情報を知りたい場合は、個人信用情報機関に対して開示の請求を行い、個人信用情報を取得することで確認できます。
個人信用情報は滞納を開始した日付から登録されるわけではなく、金融機関が個人信用情報機関に登録の願いを出した日付から登録されますので認識しておきましょう。
任意売却をすると近所に知られてしまう?
競売のように公告されるわけではないので、競売に比べ任意売却は近所に知られる可能性は低くなります。ただし、絶対に知られないというわけではないことを認識しておきましょう。
住宅ローンは滞納していないが任意売却は利用できる?
住宅ローンの滞納前に任意売却を開始することはできません。 住宅ローンの返済がストップし、滞納してしまっていることが条件になります。
任意売却と通常の不動産売却は違うの?
任意売却と通常の不動産売却の違いはほとんどありません。 違いは債権者との話し合いの有無です。しかし、この債権者との話し合いは専門性が高く、通常の不動産売買しか行っていない不動産会社では任意売却は上手くいきません。あくまで任意売却が得意な不動産会社に依頼すべきです。
まとめ
ここまで任意売却の基礎知識やデメリット、注意点を解説してきました。
ローンの支払いが厳しいときに任意売却は選択肢の一つとして有効ですが、任意売却は専門性が高く、リスクもあるため注意が必要です。
任意売却を検討している方は、実績の多い任意売却事業会社にまず相談することを推奨します。